恋するリバウンド 13 | 可愛い君に愛を囁きたい

可愛い君に愛を囁きたい

みぃたんと忍者たなかーず

第7章 恋するリバウンド


しばらくすると乃亜は新しい恋に目覚めていた。

それでもココロは乃亜のダイエットを許さなかった。

「一人だけ、幸せになる気。付き合いなさいよ」

ココロはダイエットをしようとしている乃亜を、


スイーツ通いに引っ張りまわした。

「失恋したぐらい何よ。痩せないとモテないよ」

乃亜はココロを励ます。

しかしそんな心無い言葉はすぐに見破られる。

「自分がダイエットしたいからって、許さないよ」

「痩せたいよおー……」

乃亜は悲鳴を上げた。

「いつも付き合ってるでしょ」

「私にとって初めての失恋よ」

「付き合いなさいよ、やけ食いに」

乃亜のダイエットは、ココロのせいで挫折しかかっていた。

「ああ、なんで隼人よ」

ブサイクにフラれるって、最悪。

一生、思い続けるのよ。

初めての失恋があのブサイクって。

どうせフラれるなら、


もっとかっこいいほうが良かったのに……。

「大体あんたが余計なことするからよ」

「私のせいなの」

「当たり前でしょ。乃亜が言わなきゃ、フラれずにすんだのに」

こうして二人の体重は60キロ台に投入していた。

そのせいで乃亜は今も告白できずにいた。

「タチ悪いわ。失恋ぐらい何よ」

乃亜はあきれていた。

「どの口がそう言うの」

ココロは乃亜の意見なんか聞き入れなかった。

「やけ食いしたって気は晴れないよ」

「さんざん、やけ食いにつき合わせといて」

私の失恋には付き合わないなんて言わせないんだから。

「もう失恋してもココロを誘わないからさ」

乃亜は涙目で訴えた。

これで乃亜は少しは改めるだろうか。

失恋して、やけ食いに付き合わせることを。

いや、乃亜のことだ、一時しのぎの口約束に違いない。

「乃亜の引き立て役は嫌だからね」

ココロはスイーツをつまみながら、乃亜にからんでる。

「私がモテないのはブスだからじゃなくて、


可愛い乃亜の横に、いつもいるからよ」

酒ぐせが悪いのは聞いたことがあるが、


ココロは甘いもの酔いをしてるのかもしれない。

「分かってる?」

「はいはい。以後気をつけます」

乃亜はすっかり、繰り出される愚痴を聞き流していた。

「だから早く恋して、ココロ」

それは切なる想いだった。

この状況を打開するにはココロが恋をするしかないのだ。

隼人のやつ、調子に乗って、


私をふったことを言いふらしてる。

私のイメージが悪くなるでしょ。

隼人みたいなブサイク男子にフラれた女ってだけで、


モテなくなるじゃないの。

「そうよ、だから、ダイエットしようよ」

乃亜は懇願するように言う。

「だめ、相手が見つかるまでスイーツ通いは止めない」

「モテなくなるよ」

「モテない?私が……」

その言葉にココロは敏感に反応した。

「私ってブスかな?」

「可愛いよ、ココロって」

女子が可愛いという子は、


大概ブスだって聞いたことがある。

「やっぱり、私ってブスなんだ」

「私の次に可愛いから」

うん?なんか気になる言い方……。

自分が可愛いって前提じゃない。

そりゃ、乃亜は可愛いわよ。

そしてモテる。

でもね、私だって、私だって、森三中よりはましだ。

「仲間由紀恵に似てるって」

乃亜は嘘つきだ。

そこまでじゃない。

中の中くらいだ。

絶対ダイエットなんかしないんだから。

モテ女はみんな、道連れなんだから。

「一人だけ、幸せになる気。


付き合いな、親友でしょ、私たち」

その夜、乃亜からメールが送られてきた。

いつもと違い、かなりの長文メールだ。

『恋するときれいになるというじゃない。

それはきっと本当だと思うの。

だって恋をするといろんなことを気にするでしょ。

少しでも可愛らしく見せたいとカッコウにだって気を使うし。

でもね、恋をしてないと、


本来の無精者の私が前面に現れてしまうわ。

だから恋をしなくちゃって私は思うの。

ねえ、そうでしょ。

恋を重ねれば重ねるだけきれいになれるなら、


いっぱい恋をしなきゃ。

私がココロに言いたいのはそれだけよ』

そんなメールだ。

そのメールをココロは何度も読み返した。

恋愛か……。

そろそろ私も卒業しなきゃね。

恋に目覚めてもいい歳だよね。

彼氏のいる日常だってあっていいはずよ。

だって私はブスじゃない。

中の中だ。

モテないわけじゃない。

恋愛に消極的なだけだ。

見返してやるんだから。

違う、そうじゃない。

私はそんな嫌な女じゃない。

当然あるべき評価を取り戻したいだけだ。

それに、これじゃ隼人がイケメンみたいだ。

そうだ、恋をしよう。

ココロは決心した。

じゃないと納得いかない。

恋しなきゃ。

大急ぎで恋しなきゃ。

じゃないと、恋愛相手は隼人一人だけになっちゃうよ。

それって最悪だ。

隼人なんか、下の下なんだから。

中の中ぐらいの相手なら、すぐに恋できるんだから。