「ねえ、ひなた、聞きたいことがあるんだ」
「何?」
「私の背中の翼、今日も羽ばたいてる」
ひなたは少し口を歪めて、考え込んだ。
「大きな翼を広げてる?」
鈴音はずっと気になっていることがあった。
以前は背中に強く感じていた
翼のようなものの感覚が、
日々薄れていく気がしていたのだ。
もし、あの4回転ジャンプをきめた日を
その頂点だとすると、
初詣の頃はまだ翼を感じられていた。
鈴音には翼は目に見えなくても、感覚は残ってる。
その翼の感覚を最近、
まったく感じなくなっていたのだ。
ここ1,2ヶ月のうちに
まるで羽がすべて
抜け落ちてしまったかのような
感覚だけが、残っていた。