「でもね、私、見えるんだ、
お兄ちゃんが4回転ジャンプを跳ぶ姿」
沙希ちゃんが口にすると、
それはまるで予言のように聞こえる。
周りのみんな、誰もが
次の世界選手権で翔太が
4回転ジャンプを跳べるような気がしてた。
「そしてもう一人、
鈴ねえが4回転ジャンプを跳ぶ姿もね」
沙希は鈴音の方を見た。
「えっ、私、世界選手権には出ないよ」
鈴音のスケート競技は国内、国際通して、
既にシーズンオフを迎えてる。
公式試合は秋まで何もない。
「でも見えるんだ、
だからきっと
近い未来に鈴ねえは
4回転ジャンプを跳ぶよ」
そうかな……。
鈴音は自信がなかった。
それは鈴音が今、絶不調だからだ。
「鈴ねえの翼、きれい。
本当にきれいだよ」
沙希は鈴音に言った。