「だったら、どうして、
あなたは途中で逃げたんですか」
「病院中が……、
敵だった……」
拓海は、少しずつ、
言葉を押し出すように、囁き始めた。
「そう、あの時、みんなが、僕が犯人で……」
拓海は過去を回想するように、天を仰いでいた。
「妻や沙希に、この僕が暴力を振るってると、
誰もが思ってた……」
あの拓海に対する病院の重たい雰囲気。
そう、誰もが拓海を
暴力を振るう悪い男と決め付けていた。
そして今も拓海は誤解されたままだ。
「みんなの冷たい視線……」
それで途中から、病院に来なくなったのか……。
みさきは急に、言い知れぬ罪悪感に包まれた。