これは「子宮に沈める」の監督なりの「空気人形」だと思う「体温」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

 

「終わらない青」が11年に劇場公開された緒方貴臣監督の2011年製作の長編第2作。

 

人間の女性そっくりに作られた人形のイブキと静かに暮らしている倫太郎は、ある日、イブキとそっくりの女性・倫子に出会う。アスカという源氏名でキャバクラで働く倫子は、「倫子」と「アスカ」という2つの顔の間で自分を見失いそうになっていた。やがて2人は交際を始めるが…

 

緒方監督はこの次に監督した「子宮に沈める」では是枝裕和監督の「誰も知らない」を自分なりに作り直していますが、この「体温」では是枝監督の「空気人形」を自分なりに作り直しています。そんなことを本人が言っているかは知らないですが、2作品続いているのでかなり意識しているはず。(あとで監督のインタビューを探して読んだら、こっちの構想の方が先であとで「空気人形」と同じくリアルドール愛を描く「ラースとその彼女」を知ったそうです。それを知って観ると「ラース」の方が内容的には近いかも)

「空気人形」はエア人形のダッチワイフをぺ・ドゥナが演じていましたが、こっちはリアルドールをAV女優だった桜木凛が演じています。

人間が演じるリアルドールと孤独な青年の日常を綴る前半と後半では人形そっくりのキャバ嬢と知り合って彼女と親密なって交際を始める姿を対比してみせます。

「空気人形」は人形の内面を描くファンタジーでしたが、こっちはあくまで人形を愛する青年の目線で描かれ、青年の中ではリアルドールが人間の女性に見えているということを人形を人間が演じることで提示します。その彼が人形そっくりの女性と出会ったらどうするかというのを見せていきます。

桜木凛さんは調べるまでAV女優とは思えない演じぶりで、女優賞ものの人形ぶりです。

終盤の生々しいHを描くにはAV女優である彼女の演技力が必要だったのだと思います。

「子宮に沈める」に至る定点観測のような視点での描き方がこの作品でも見られます。

淡々としているけど切実なエロがある映画なので好きです。

この監督の作品を数本観ましたが、今のところ全部好き。