エストニアの作家アンドルス・キビラークのベストセラーをライナー・サルネ監督が映画化したポーランド・オランダ・エストニア合作映画です。
先祖を追憶する「死者の日」を迎えるエストニアの寒村。死者は家族を訪ねて一緒に食事をとりサウナに入る。精霊や疫病神が徘徊する中、村人たちは「使い魔クラット」で物を盗み、極寒の冬を乗り切るべく行動していた。村に住む娘リーナは村の唯一の青年ハンスが好きでハンスは村にいる男爵の娘に首ったけで、リーナは魔女に相談し、ハンスは悪魔を介してクラットを手に入れ、恋愛を成就させようとするが…
というベースはラブストーリーですが、悪魔や魔女が村人と普通に共存している世界でファンタジーといえないくらいの生活感ある描写で、なおかつ完璧な映像美で描かれ非の打ち所のない傑作でした。
これは今年観た洋画で一番好きです。CG然とした場面なしで完全な幻想的な世界を作り上げたこの作品の監督やスタッフやキャストは本当に凄いです。
使い魔クラットが変幻自在で、言葉も巧みでいい味出しまくり。ヒロインも恋に悶えて狼になったり、世界観がひたすら魅力的です。悪魔や魔女も人間味があって新鮮。
こんな作品を現代に作り出すエストニアって凄い。
2020年に亡くなった「ムカデ人間」のハイター博士役のディーター・ラーザーが男爵役で出演していて、なんか嬉しくなりました。