横溝正史の小説を「ザ・ウーマン」の高林陽一監督が元祖ニューハーフの松原留美子主演で1981年に製作した角川映画です。GYAO!の配信で観ました。
胸を病んでいるため蔵の中に隔離されて暮らす娘小雪と世話をする弟笛二。豪雨の夜、二人は病床に倒れ込みお互いを貪りあう。笛二がのぞいた遠眼鏡の向こうには激しく絡み合う中年カップルが…
珍しく金田一耕助が登場しない横溝原作作品です。
物語は中尾彬演じる雑誌編集者に持ち込まれた笛二が書いた小説として始まります。
高林監督は1975年に金田一耕助モノの第1作「本陣殺人事件」を映画化しています。そのときの金田一耕助役が中尾彬でした。
ヒロインの松原留美子は元祖ニューハーフですが、現在で言うところの女装家に近い感じで手術で身体を女性化したりしていません。
映画は前半、弟が蔵の中で暮らす姉を介護する姿が描かれます。姉が全然声を発しないのがいい感じ。姉の身体を拭いたりする弟が欲情を抑えているのに姉の方から迫るという近親相姦展開ですが、姉役を男性が演じることでよりヤバさが際立ちます。
監督自らも撮影に加わり独特の映像美が耽美な物語にマッチしています。
公開当時はヒロインがニューハーフであることばかりが取り沙汰されていた印象ですが、作品自体はなかなか正統派な耽美映画でしっかり作り込まれた良作でした。
中盤からは弟が近所を遠眼鏡で覗き見して、勝手に吹き替えしたりしています。笛二は声を発することが出来ない姉の唇を読んで代わりに話していたから、遠眼鏡で中年カップルが何を話しているかをリップリーディング出来るのです。
覗き見されるのは中尾彬と吉行和子のカップル。
二人のねちっこいディープキスを見て姉があわあわするのが楽しいです。
中尾彬と吉行和子はSMプレイをしていたり、さらに大変なことに。
そして、それを覗き見ることの「裏窓」的な面白さも。
しかし、オチがまた強烈でニューハーフの松原留美子が小雪役だったのにも深い意味がありました。
なぜこの傑作が完全に埋もれているのか謎です。
