観るたびに印象が全然変わるジブリアニメの作品的転換点な昭和の田舎の夏物語「となりのトトロ」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。


スタジオジブリの代表作にして1988年に「火垂るの墓」と二本立てで公開された作品です。こないだの日テレでの放送を録画して久しぶりに観ました。

サツキは小学6年生の女の子。入院中のおかあさんに空気のキレイな土地で静養してもらうために妹のメイとおとうさんと一緒に田舎に引っ越してきた。新しい家は大きなクスノキの近くに建っているおんぼろ屋敷。到着早々メイはマックロクロスケを見つける。ある日、サツキが学校に行っている間に森へ入ったメイはトトロと出会い…

考古学を大学で教える父と病気で入院中の母、6年生のサツキと4さいのメイ。
サツキがトトロはトロールだと言及する場面があり、そうだったのかと思いました。
サツキとメイは引っ越したボロ屋がおばけ屋敷だと喜んでいたりします。
前半は田舎暮らしのライフスタイルをじっくりと見せ、トトロの登場で両親が家にいないときのサツキとメイは癒されます。
終盤、母の退院が延びたことでショックを受けたメイがいなくなり、池に落ちたんじゃないかと緊張が走ったあとのトトロの登場。
緊張と弛緩の瞬間が見事でした。
自分はああいう田舎を知っているだけになんだかしっくりこない点がありましたが、おそらく劇場で初めて観たときの嫌悪感はその田舎描写によるものだった気がします。今でもあの田舎の現実を全く描かない描写を嫌悪するほどには思えないのは自分も田舎を出てから長くなるからだろうか?
公開当時は同時上映の「火垂るの墓」で号泣したあとにトトロを観て、こんな田舎で遊んでるだけの映画は意味がないと思ったもんです。
やっぱり田舎はあんなスピリチュアルでまわりの人たちがみんな親切なことなんてない世界だよなと思います。
あの完全に農村地帯な田舎にあんな和洋折衷な二階建ての家とかありえないし(あの時代には田舎は土地があるのでだいたい基本的にでかい平屋建てしかない)、カエルの歩き方が変だったり、お風呂や料理のときの火を扱うことの大変さが描かれないし、メイちゃんが裸足で田舎道をダッシュするのも絶対無理だと思うし、まあ田舎者が感じるリアル田舎要素が
ことごとく隠蔽されたファンタジーな田舎過ぎたりします。
それでも今ではあんまり腹は立たず、よくもまあ物語らしい物語もないこの作品を成立させたもんだと感心します。トトロと子どもたちの交流の原型は「パンダコパンダ」にあるし、この世界観を説明し過ぎないあたりは「千と千尋の神隠し」に繋がっている気がしました。
物語に頼りすぎず場面場面のインパクトが宮崎アニメの真骨頂であることを実感しました。