半端ない特殊メイク愛を感じる美大予備校生の大真面目な青春ホラー映画「血を吸う粘土」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

特殊メイクアーティスト梅沢壮一の初長編作品です。
主演はミスiD2017の武田杏香ですが、グラドルシンガーで知られる藤田恵名が観たくて来ました。

姿を消した彫刻家のアトリエに引っ越した美大予備校AINAアカデミーには5人の生徒がいた。
日高は東京の大手予備校帰りでトップクラスの成績、谷は誰にも心を開かずストイック、望月と青木は唯一の男子山下を巡って三角関係だった。
青木が不在中だった日高の粘土を使っていたので、日高は誰のかわからない粘土を使いはじめるが、その粘土は日高の傷から血を吸うと、1人居残っていた谷を襲い…

コメディみたいなタイトルのわりに内容は大真面目です。
タイトルにいつわりない本当に血を吸う粘土のホラーであり、地方の小さな美大予備校に通う予備校生たちの青春群像劇でもありました。
短い上映時間ですが、登場人物みんなに見せ場があるし、キャラ立ちも見事でドラマパートの見ごたえもある青春ホラーでした。
生徒たちはミスiDがらみのメンバー中心でおそらく女優経験もあんまりないと思われますが、先生が黒沢あすかで消えた彫刻家の謎を知る男が津田寛治だったりで演技派が脇を固めているので安定感あります。
またお目当ての藤田恵名は予想以上に重要な役で、前半のヒールをしっかり演じていました。ただ彼女のナイスバディが封印されていたことだけは残念です。まあでも彼女の純粋な演技力が評価されそうな作品でもあります。
ほぼ無名キャストのおかげで誰が被害者になるのか読めない展開もいいです。
キングレコードや角川の映画は商業的な理由でエロかったりグロかったりする作品が多いですが、この作品はエロに逃げずどっぷりホラーとして勝負をかけています。
粘土というモチーフを活かしたぐにゃぐにゃした動きや人体よりもろい質感を考え抜いた特殊造形の繰り出し方が見事で内容と相まってアーティスティックですらあります。
CGに頼らずどこまでも造形物で見せようという熱意と終盤の想いがほとばしるクレイアニメに監督の情熱を感じました。
惜しむらくは名古屋での公開2回目(1日1回上映の2日目)なのにお客さんが自分含めて二人しかいなかったことです。
こんなに頑張って作られた映画がこんなに認知されていなさ過ぎてもったいない限りです。
いつかきっちりロードショーされることを祈ります。
そのときは藤田恵名のセクシーな粘土像シーンとか追加して欲しいけど…