神代辰巳監督の傑作のリメイク版は俳優加藤雅也を楽しむ映画になっていた!「棒の哀しみ」 | キネマ画報

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神代辰巳監督の遺作「棒の哀しみ」のリメイク版をオリジナル版と同じ劇場で観ました。

大村組幹部の田中は若頭ながらチンピラみたいな仕事を進んでこなすヤクザ者だった。田中は組長から分家になれと言われ新たに田中組を作る。しかし、本家の跡目候補の弟分倉内とうまくいかず彼をハメようとするが…

みかじめを払わないバーで嫌がらせしたり、可愛い女がいると惚れさせて高級娼婦に転がしたり、クラブの支払いがツケのままの社長の会社に取り立てにいったり、およそ幹部がやるような仕事じゃない細かいシノギを田中自らバリバリこなしています。
おまけにキレイ好きでトイレ掃除も素手でやるし、頭もキレるし、器用だけど、組長に煙たがられる。
オリジナル版は奥田瑛二が田中を演じていて、まさに哀しみを体現してましたが、加藤雅也はあんまり哀しげではありません。むしろ好き好んでチンピラ仕事をやっている感じ。
それは加藤雅也がこの役をすごくノリノリでやっているからだろうと思われます。
この映画では「テラ・フォーマーズ」や「真田十勇士」などメジャー映画で主要キャストをやっているときと段違いに加藤雅也の存在感が溢れていてイキイキしてます。

とはいえ作品的にはオリジナル版があまりに傑作なので、この低予算ぶりでリメイクを作った意味がわかりません。しかも先にDVD版前後編をリリースしてからの劇場公開という形もなんとも微妙です。

そんな中でもこの作品では井上奈々の全裸も辞さない演技と加藤雅也の男っぷりが堪能出来ます。

あまりに変な加工でVHSみたいな映像だし、カメラは動きがガタガタで撮影技術もVシネクオリティだし、音声も悪いしで低予算感丸出しすぎで井上奈々の美しさや加藤雅也の迫真の演技に技術が追いついていません。

加藤雅也はキャリアも演技力もあるし、何より格好いいし、学歴まであるのに、同じようにデビューした阿部寛に比べると俳優としての扱いが微妙です。実にもったいないです。加藤雅也は出来る子です。ってことをこの作品で実感しました。「アンフェア」シリーズでは脇役を楽しそうにしていましたが、主演でももちろん魅力的です。

なのに出るメジャー作品はことごとくコケるし、主演作品は安く仕上げられすぎて加藤雅也自身が正しく評価されない危惧があります。
この作品は俳優の素晴らしい演技を引き出せているのにそれをきちんと撮影していないし、編集していないのはなぜなんでしょうか?師匠である神代監督にオマージュを捧げているはずなのに。

そんなわけで加藤雅也が素晴らしいだけに仕上がりが残念でたまらない映画でした。