
高倉健さんの追悼でBSプレミアムでやっていた「昭和残侠伝 死んで貰います」を観ました。
ヤクザ者の花田は賭場でイカサマを疑いながら知らん顔で出ていくと、追いかけてきた賭場の連中にボコられる。
賭場にイカサマはつきものだ。文句があるならイカサマをきっちり見抜けと捨て台詞を吐かれ、花田はその言葉を心に刻む。
傷だらけの彼は大銀杏の木の下で雨宿りしていると芸者の卵幾江に声をかけられ持っていたお酒をもらう。
3年後、花田は賭場でかつて花田をボコった男のイカサマを見破り、ひと暴れして逮捕され収監。
花田の服役中に料亭喜楽の主人だった父が亡くなり、さらに悪いことに関東大震災が起こる。
義理の妹(父の後妻との子)も亡くなり、義母は盲目となっていた。
そんな中、料亭喜楽は板前の風間と伯父によって守られていた。
出所した花田は喜楽で板前として働き始めるが…
高倉健の代表作品ですが、任侠映画に興味がなくて観てませんでした。
なんとなく観始めてびっくり。
まず序盤の花田と芸者の卵幾江の出会いシーン。
幾江(愛称はいくちゃん)はヤクザ者の花田をお兄ちゃん!と何度も呼びます。
か、かわええ。
若い頃の純子マジかわええ。
今では気の強い婆さん役が多い富司純子がまさかのぐうかわ。
いくちゃんの「お兄ちゃん!」が萌えええええええええええええ。
まさか萌えのニュアンスが任侠映画の中で芽生えていたことに驚かずにいられません。
なんてことないシーンなのにこの大銀杏のシーンが名場面として語り継がれるのはきっと当時の男たちが若き藤純子のいくちゃんに萌え萌えきゅんしたからなんだと思う。
あと花田の相棒的な風間の髪型が両サイドをかなり短くしていて、真ん中を立てていてほぼモヒカンなことにびっくり。
風間は板前としてはパイセンだけど、花田は流れ者だった風間を拾ってくれた恩人の先代の主人の息子。
花田は刑務所暮らしで震災という大変な危機の中、喜楽の暖簾を守ってくれた風間には恩義を感じている。
風間は花田のいくちゃんとの恋を何気に後押ししたりすることも。
しかし、 喜楽にはいくちゃんを狙うヤクザ者や花田に右手を潰されたイカサマ師などがやってくる。
花田も血が昇ることがあっても風間やいくちゃんが止めに入る。
それでもナチュラル・ボーン・ヤクザの花田はヤクザに戻るという。
まあサブタイトルが「死んで貰います」だから、花田は最後に誰かを殺しに行くのは明らか。
でそのきっかけになるのは喜楽の若旦那(義理妹の夫)が相場に手を出し、ヤクザに金を借りて店の権利書を取り上げられてしまったこと。
その権利書を店の先代と懇意にしていた親分が取り返すも帰り道に襲われ、親分が殺されてしまう。
親分に仲介を頼んだ風間がまず復讐を誓います。
その話を聞いた花田は長ドスを手に立ち上がる。
いくちゃんはそんな花田を止めずに、いつまでも待っているという。
うわ、いくちゃんそうきたか。
そして、主題歌が流れる中、風間と花田が合流。
風間は花田に言う。
「ご一緒願います」
モヒカンかっけええええええええええ!
ワイド画面のテレビより横長の画面サイズに色みを抑えたじっとりとしたカラー。
終盤の殴り込みの場面では障子に飛び散る血の色だけが鮮やか。
斬り合ううちに花田の着物は裂けて、締まった身体の背中には唐獅子牡丹が露になる。
美しい。
シリーズも7作目ということもあり、この様式美が完成されているのかも。
90分くらいのタイトな上映時間にムダがない。
これは今観ても傑作でした。
健さんが亡くなってからこの作品に出会ったのが残念。
もっと早く観ておけば良かった。