NHKでドキュメンタリーまで放送された園子温の新作「希望の国」の意味 | キネマ画報

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まさかNHKが園子温監督のドキュメンタリーを放送する日がくるなんて10年前の自分には想像もつきませんでした。 

あまりにも自主映画臭かった初期、「自殺サークル」に始まる残酷描写大サービス路線、エロ路線、妄想系作品を経て、「紀子の食卓」からの国際映画祭賞獲り作品群あたりから、世間に注目されてはいたけど、NHKの記者が興味を持つような作品を作る日が来ようとは…

今回は東日本大震災の後に起こった長島県(長崎、広島、福島をミックスしたらしい)の震災による原発事故に被災する家族の物語。 

放射能汚染による強制退去地域の境界にある家の酪農家の老夫婦と息子夫婦が震災を境に別れ別れに暮らし、老夫婦の妻は家にいても「家へ帰ろう」という心の病気があり、近隣地域に避難した息子夫婦の妻は、妊娠中の子どもの安全を考え防護服で生活する。 

父と子の結びつきは深く、息子は両親の退去を何度も説得にくるが、父はがんとして聞き入れず。 

老夫婦と息子夫婦の選んだ道は…

という話です。

これのブルーレイが出たら買うかと言われれば買わないけど、観ないでテーマだけ聞いて非難するくらいなら、観た方がいい映画です。 

監督がドラマでしか描けないことがあるという言葉の答えがここにありました。 

声高に反原発のメッセージを叫ぶことより、ドラマにしたことで無関心な人に届くものになっているのは明らかです。

老夫婦の妻役の大谷直子が老いてなおかわいげがあり、昔彼女が出演した「肉弾」のうさぎちゃん役を思い出しました。 

夫役の夏八木勲、息子役の村上淳、その妻役の神楽坂恵もいつも以上にハマり役でそれぞれの代表作に入りそうな入り込み具合です。

生々しいシーンはほぼないし、反原発も押し付けがましくないし、ストレートな言葉をぶつけながら、感じろと言われている気もする。

観ている最中何度もぐっときたし、やっぱいい映画には違いないと思う。