
普段はガレージで自動車修理工として働いているバーニーは将来有望なカースタントマン。
そのドライブテクニックは撮影所にとどまらす、裏では犯罪の逃走車の運転も請け負っていた。
そんな彼は隣人で子連れの人妻アイリーンに密かな想いを寄せていた。
二人はだんだん会話するようになり、デートしたりする仲になるが、刑務所から彼女のヤバそうな旦那が出所してきて、しばらく距離をおくようになる。
そんな彼女の旦那はカタギになろうにもムショで作った借金に追われ、組織に質店の強盗を強要されていた。
旦那からこの仕事を断れば、妻や子も命を脅かされると聞いたバーニーは、自ら進んで強盗のドライバーを請け負う。
しかし、そのヤマには裏があり、強盗直後に予想だにしなかった事態が起こる…
あらすじだけ追えばジェイソン・ステイサムあたりが主演しそうなB級アクションが出来そうですが、本質的には人間ドラマ。
しいて言うなら「タクシードライバー」と「ノーカントリー」を足してカクテルしたようなテイストか。
寡黙だけど、根は優しそうなバーニーをライアン・ゴズリングが演じ、旦那がわけありなヤンママをキャリー・マリガンという若手演技派がやっている時点で、痛快アクションになりようもないけど、これがなかなかのハマリ役。
特に温和そうなバーニーが犯罪組織の人間見つけて、人妻との甘いキスの後に豹変し男をボコるときの狂気―えもいわれない映画的な瞬間でした。
強盗を裏で手引きするピザ屋のニーノをロン・パールマン、その相棒で元映画プロデューサーの非情な裏稼業の男をアルバート・ブルックスがやっていて、これまたいい味出してます。
R15指定のバイオレンスシーンはクローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」や「イースタン・プロミス」調のエクストリームでゴアだけど、必要以上に見せないのでドライな感じも。
なんだかんだ言ってもバーニーの人妻への秘かな想いと犯罪組織との攻防で終始ドキドキしっぱなしの映画ですが、悪そうな奴らが案外あっけなくやられるのが、ステイサム好きなB級アクション好きには、なんかちょっと物足りないかも。
何を期待してきたのか客席はギャルとチャラ男のカップルだったり、インテリ老夫婦だったりでなんかちょっと珍しい光景でした。
その客層の幅の広さがこの映画の底力でもあるような気がします。