
マリリン・モンローの秘められた恋物語かと思いきや、名優にして名監督のローレンス・オリビエがヤンデレかまってちゃん女優マリリン・モンローに振り回されるところが面白いバックステージ物でした。
アメリカの良家のボンボン、コリンは映画好きが高じて、映画業界で働く為にイギリスへと渡る。
彼が扉を叩いたのは英国の名優ローレンス・オリビエのプロダクション。
面接で仕事はないと言われても、その日以降も仕事が出来たら下さいと事務所に日参。
イケメンな彼はそのうちオリビエの妻・ビビアン・リーに好かれるようになり彼女の薦めで、ようやく仕事を手にすることができる。
その仕事はオリビエが監督・主演する新作「眠れる王子」のサード助監督。
助監督といえば聞こえがいいけど、実質は現場の雑用係。
その撮影現場はイギリスのパインウッドスタジオ。
そして、この映画のヒロインとして招かれたのはハリウッドのセックスシンボル、マリリン・モンローだった。
三番目の夫で作家のアーサー・ミラーと、メソッド演技のコーチであるリー・ストラスバーグを伴ってやってきた彼女は現場に入るなりトラブルメーカーに。
彼女はかなりの気まぐれ屋で、オリビエの演出にケチをつけるわ、遅刻するわとやりたい放題。
そんなてんてこまいな現場に監督・主演のオリビエはイライラをつのらせるばかり。
困り果てたオリビエは、腹を割ってマリリンの夫ミラーに相談するも、彼は彼でマリリンとひと悶着あったばかりで「彼女といると仕事にならない」といい捨て、彼女を置いてとっととアメリカに帰国。
夫が帰って、いよいよ情緒不安定になったかまってちゃんのマリリン。
それでもまだ撮影は終わっていないので、なんとか彼女のご機嫌をとり、撮影を進める為、オリビエはコリンを彼女のお目付け役に。
そんなコリンにマリリンが急接近し…
この映画で面白いのは、タイトルにあるコリンとマリリンの束の間の恋を描く中盤からの展開より、前半のオリビエVSマリリンの攻防です。
けっこうおいしい役でもあるオリビエ役には、なんとケネス・ブラナー!
最近では「マイティ・ソー」みたいなチャラいアメコミ映画を作ったりしてますが、彼は元々シェイクスピア作品の監督・主演で名を上げた人。
ローレンス・オリビエもまたかつて多くのシェイクスピア作品を監督・主演し、女王からサーの称号を冠いた名優でした。
だからブラナーが注目されはじめた当時は、彼をオリビエの再来と思った人も多かったのです。そんなブラナーがオリビエを演じるという配役は実にお見事。
この映画のオリビエはすでに盛りを過ぎていて、ハリウッドのセクシー女優の人気に便乗して軽いコメディを作るつもりが、やってきた彼女は演技派女優みたいにメソッド演技にかぶれていて、現場で理屈をこねてゴネまくるという悪夢のような体験をすることに。
英国では知らない人がいないほどの名優の彼が、薬づけで情緒不安定なセクシー女優のわがままにひたすら振り回される…
でも彼は優れた俳優で監督だから、彼女が天性の魅力を持った得難い女優であることをしっかり認め、困難の中撮影されたラッシュフィルムを観て、彼女にうっとりする。
こういう場面があるのが、この作品のいいところだと思います。
正直、タイトル通りのボンボン助監督とスター女優の恋物語だけだったら30分で飽きてしまったかも。
モンロー役のミシェル・ウィリアムズは、たびたびこの映画の中で裸になるけど、観客に肝心なところを見せてくれません。
がっかりした人は黙って「ブロークバック・マウンテン」か「ブルーバレンタイン」を観るべし。
きっとあなたが見たかった場面があるはず!(見たくもない場面も多いと思うけど)