
原田芳雄さんが亡くなったそうです。
2008年の時点で余命2年と言われていたそうです。
入院中にも関わらずこの作品の舞台あいさつに駆けつけたのは、最後の主演作品に対する責任感からでしょう。
以下は公開初日に観た感想です。ちょっとひどいことも書いてますが、観た時点での率直な感想なのでそのままにしてます。
原田芳雄がそこまで(入院中にも関わらず試写会の舞台あいさつに参加)するこの作品は、かつての俊英ぶりから一転、近年は信じられないような失敗作品「座頭市THE LAST」とか仲村トオルの猫パンチアクション映画「行きずりの街」とかを監督している阪本順治の新作で、シルバー向けの内容だからか開き直りの1000円均一料金です。
大鹿村の伝統芸能大鹿歌舞伎で主役を張る善のもとに手を取り合って駆け落ちした妻と親友が帰ってくる。
妻の記憶がまだらになって手に負えなくなった親友は善に妻を返すというが…
主演が原田芳雄で妻が大楠道代、親友に岸部一徳、妻の父に三国連太郎、あと佐藤浩市、松たか子、瑛太、でんでん、石橋蓮司、小倉一郎と豪華で達者なキャストが大鹿村の村人です。
脚本がベテラン荒井晴彦ということもあり、役者たちもノリノリでやってます。
このキャストと脚本を得て、不調が続いていた阪本順治監督も良くできた映画に仕上げていました。
ぜいたくをいうとヒロインが大楠道代じゃなくて大竹しのぶとか松坂慶子あたりの可愛げがある女優だったら良かったのにと思います。
大鹿歌舞伎で白塗りになった大楠さんはビジュアル的にホラーすぎます。
あと長野県の大鹿村が舞台なのに方言が一切ないのが気になります。
だからローカル感がないのも残念。
とはいえ批評家受けはすごく良さそう。
阪本順治的には東スポ映画大賞の汚名返上は出来そうです。
追記。
内容的には原田芳雄主演の「寝取られ宗介」も思い起こさせる人間喜劇でした。
阪本監督が原田さんの主演作品を企画し、「KT」で喧嘩した荒井晴彦とも協力してこの作品を作り上げたのは原田さんの身体のことを知っていたからでしょう。豪華キャストが集まったのもみんなそのことを感じていたからだと思います。(盟友桃井かおりが参加していないのが残念な気もします)
主人公善に対するみんなの暖かさがそのまま現場の温度だったのではとも感じます。
原田さんがこの作品の門出を見送るようにして亡くなったのは、まさに役者魂のなせるわざ。
原田さんのおかげで一人の監督が復活出来ました。
ご冥福を祈ります。