「国選助太刀人候補は一人に絞られました」
「どうやって?」
「残念ながらサブローくんは辞退しました」
「なんで?」
「イチローくんとの戦いがトラウマになったそうです」
なんでだろう?
覚えている範囲では彼の方が最後は優勢だったと思うけど。
「彼が辞退しなくても、あの2次オーディションで我々の考えもまとまりました」
「でもぼくもやりたくはないんですけど」
「次の候補者が出るまではあなたが最有力候補です」
まだ募集はあるのか…
「つまり、希望者が出てくるような戦いを実戦で見せないとあなたのかわりが出てこないということでもあります」
結局はもう1回、殺し合いのステージにたたないといけないということだ。
「本番はいつですか?」
「もちろん、イチローくんの傷が癒えてからです」
たいした怪我はしてないから、けっこうすぐってことか。
「国選助太刀人は仇討ちの介助が本分です。しかし、まだ仇討ちを希望する犯罪被害者遺族がいません」
それはそれで光の見えない闇のトンネルを歩くような気分だ。
「サブローくんに会えませんか?」
小さいおっさんの顔がちょっと曇った。
「なぜですか?」
「なんで国選助太刀人を希望したのかもう一度聞いてみたいんです」
「彼の志望動機は自らの名誉回復の為です」
前にそんなことを言っていたのは覚えている。
「直接聞きたいんですけど」
「どこまで覚えてますか?」
「はい?」
「サブローくんとの戦いのことを」
「彼にスタンガンモードの端末を押しつけられたところまでは」
「そうですか…」
なんか言いにくそうなリアクションだった。
ぼくはあのあと、彼に何をしたんだろうか?