ヴィヨンの妻 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

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太宰の小説を根岸吉太郎が映画化! 

根岸吉太郎といえば古くは「遠雷」、「ウホッホ探検隊」、最近では「サイドカーに犬」など文学作品を上手に映画化してきた実績のある人。 

しかし、キャリアのわりにヒット作に恵まれない人でもある。(多分「探偵物語」と「ひとひらの雪」くらい)

そんな監督がフジテレビ資本でこの作品を作り上げたことにまず驚きます。 

主演は松たか子と浅野忠信。 

献身的な妻は実際に現役人妻の松たか子でリアルだし、女に金にだらしない旦那役も離婚したばかりの浅野忠信でまたリアル。

2人ともものすごいはまってます。 

終戦直後の日本を美術も衣装も見事に再現し、ボロボロの列車まで走ってます。 

原作にある古い言葉使いのセリフも生かし、前半はまさに原作のイメージ通り。 

ウキウキするほど面白い。
しかし、原作のエピソードは中盤くらいで終了。 

しかも妻夫木演じる岡田という工員のある大胆な行動が意外な形で未遂に終わる。

原作で一番見たかった場面なのに! 

そこからの展開が太宰の他の作品にあるエピソードなんかを並べていわゆる太宰な展開。 

急激につまんなくなる。 

やたら太宰的なキーワードを盛り込んだりしてかなり強引で無粋。

しかし、それで映画的な山場を作り上げきれいなハッピーエンドに。 

やっぱりフジテレビかと思う。

映画としてはかなり口当たりよくまとめられているけど、太宰が描いたことの真逆な印象が残る。 

原作知らなかったら傑作と思ったかもしれない。 

それでも並の映画より遥かに見応えあります。 

個人的には前半がかなり素晴らしい出来だっただけに残念。