フーゾクにハマるといろんなお店のことが知りたくなった。
市内にはフーゾク街がいくつもあり、先輩の情報をもとに何か所か行ってみたが
先輩と自分の性癖というか趣味はちょっと違うみたいだった。
情報誌で夢のように素敵な店を見つけても実際に行ってみると「珍遊記」から飛び出してきたような女の子しかいなかったりしてガッカリする。
店の設備も無理矢理トタンで仕切ったプレイルームに、シャワーは共同という目的に至るまでに萎えること甚だしいところも少なくなかった。
どうせハズレが多いなら、思い切り安い店に行ってみようと飛び込んだのがななちゃんの店だった。
「リアリズムの宿」に入った
つげ義春の気分が味わえるその店にななちゃんはいたのだ。
「もっきり屋の少女」のチヨジかも知れない。
「はきだめに鶴」は、
現実にあったのだ。
彼女がいれば狭いシャワールームもちょうどいい距離感に思える。
この距離なら眼鏡なしでもななちゃんの顔がしっかり見える。
彼女はボクの目線のやや上から、こっちをしっかりと見据える。
ややMの気質があるボクは、ビビリながらも期待感で武者震いしそうだった。
そのまっすぐ過ぎる視線に言葉を発することも出来ず彼女の次のアクションを待つ。
やがて彼女の手がボクの背中に回り身体をぐっと引き寄せた。
包容力があるっていうのは
こういう感じか?
子どもに戻ったような気分になった。
ジワジワと彼女の温もりが伝わり始める頃、
スッと身体が解放された。
彼女はなぜか泣きそうな声で、「シャワー浴びよっか」というと別のスウィッチ入ったようだった。
今度は明るくおどけた感じで「お湯加いかがっすかぁ?」っていいながら冗談ぽくシャワーをかけてくる。
ここからは初対面にしてはフレンドリーすぎるくらいの雰囲気に。
たいてい最初のシャワーでは女の子に機械的に扱われ、大事な部分もぞんざいに(もしくは徹底的に)洗われるもんだったが彼女は違った。
すっかりビオレUが洗い流され、丁寧すぎるくらいに身体を拭いてもらい申し訳ない気分になる。
彼女の接客は、これまで会ったどの子とも違っていた。
彼女はどのお客さんに対してもこうなんだろうか?
彼女ほどのルックスがあり、非の打ち所のない接客が出来るフーゾク嬢がどれだけいるだろう?
今なら高級店のNo.1と紹介されても疑わないだろう。
彼女は自分の身体をすっかり拭き終えると照明を落とし、ベッドに仰向けになった。
「よろしくお願いします」
彼女によってなんらかのゲームが開始されたが、ボクはまだそのルールを知らなかった。