
ジョージ・A・ロメロのオブ・ザ・デッドシリーズの最新作。
前作の「ランド・オブ・ザ・デッド」(05)からこんなに早く新作が観られるとは!
「ランド・オブ」が派手なアクション映画寄りな作品だったのに対し、今回は第一作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を思わせる手作り感いっぱいのゾンビ映画。
最近「ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)」や「死霊のえじき(デイ・オブ・ザ・デッド)」がリメイクされていたロメロ。
その辺の作品に対し「お金が入ってよかった」くらいの感想しか言ってなかったロメロ。
今回の作品を観れば彼がどういう思いでゾンビ映画をやり続けているのかちょっとわかった気がします。
今回は、これまでの作品とはスタイルを変えて「クローバーフィールド」などで話題になったポイント・オブ・ビューの手法により新たなゾンビ映画を作りました。(さらにいうと「食人族」スタイルに近い)
しかし、ポイント・オブ・ビューゾンビ映画は、すでにスペインの「REC」という作品がある。
しかもそのリメイク版もアメリカで公開されたばかり。
ロメロは、どうしてこの手法を用いたのか?
それはネット社会をモチーフにしているから。
現代の若者がゾンビ的状況におかれたら?
そう一般人が撮影したゾンビ映像がアップロードされて、その映像で多くの人が状況を確かめるだろう。
ロメロは、そこに目をつけていました。
インディーズ映画を撮影している学生がゾンビ的状況に直面!
なんと彼らは2台のビデオカメラで撮影し、パソコンで編集までしてくれる!(「クローバーフィールド」の撮りっぱなし映像たれながしとは違い実に観やすい!)
携帯電話や監視カメラの映像なども取り込んでゾンビのやんちゃぶりも多面的に見せてくれます。
ベテラン監督ロメロが、若手の映像作家よりも柔軟にテクノロジーを使いこなしてます。
巨匠ロメロは教えてくれます。
ホラーは、予算の大きさではなくアイデアが重要なのだ。
思えば過去の「オブ・ザ・デッド」シリーズも作られた当時の社会的な物事を取り込んでいました。
「ナイト・オブ」では人種問題
「ゾンビ」ではTVメディアに大型ショッピングモール
「死霊のえじき」では軍事問題
「ランド・オブ」では格差社会
そして今回はネット社会。
ロメロは、その当時の庶民に身近な物を使うことで、ゾンビという荒唐無稽な存在にリアリティを与え、恐怖を演出してきたんだなあと今になって思い知らされました。
とはいえ、そんな屁理屈を抜きにしてもゾンビ映画ファンの期待に十分応える残酷描写も満載です。