近江を歩く -宝厳寺- | れぽれろのブログ

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忘れたころにやってくる、西国三十三所探訪シリーズ。
10月26日の金曜日、琵琶湖の竹生島にある、西国三十三所の第三十番札所、宝厳寺に行ってきましたので、記録を残しておきます。

自分の勤めている企業は、10月が創立記念月ということで、毎年1日お休みが増え、今年は10月26日がお休みでした。
平日なので観光地は休日と比べると空いているため、自分はこれ幸いと毎年あちこちに出かけています。
琵琶湖の竹生島を訪れるにはフェリーに乗る必要があります。
平日であればフェリーも空いているかも。
ということで、今年は竹生島に行ってみることにしました。


琵琶湖の中には島が4つあり、竹生島はその中で2番目に大きい島です。
場所は琵琶湖の北側。
竹生島行のフェリーを運航しているのは、京阪電鉄系の琵琶湖汽船と、近江鉄道系のオーミマリンの2社。
琵琶湖汽船は主に長浜と近江今津から、オーミマリンはおもに彦根から船が出ているようです。(それぞれ大津やマキノから出る便もあるようですが、やや特殊な便のようです。)
今日もご機嫌青い空♪ 琵琶湖巡りの白い船♪ (by「京阪特急」)
三木鶏郎ファン(←?)としては、やはり京阪グループのお船で行きたいものです。

ということで、琵琶湖汽船のフェリーで行くことに決定。
大阪から訪れる場合、近江今津が最も近いですが、湖西線なのでやや訪れるのが面倒。
長浜の街並みも面白そうですので、長浜港から乗ることに決めます。
奮発して新幹線に乗り、新大阪から米原へ、米原から新快速に乗り換え、長浜までは約10分、1時間もかからずに長浜に到着しました。さすが新幹線。

長浜港からフェリーに乗ることになりますが、長浜港のフェリー乗り場の位置が意外と分かりにくいです。
長浜港は3つの埠頭に分かれており、一番北側がヨットハーバー、真ん中がフェリーの乗り場、一番南側から出る船もあるようですがここは主に駐車場と釣り場になっています。
自分は長浜駅の西側にある豊公園の方から海へ向かい、辿り着くとそこはヨットハーバー。ここは違うなと場所を移動、辿り着くと駐車場と釣り場(笑)。
ようやく乗り場の表示を見つけたときには、既にフェリーは出てしまっていました。
フェリー乗り場の案内は、南からの場合は分かりやすいですが、北側(公園側)からだと分かりにくいです。
フェリーは1日5本、およそ1時間30分に1本、なので、1時間半の間、待ちぼうけ。
豊公園をウロウロしたり休憩しつつ、次のフェリーを待ちます。
後で調べてみると、今の季節は土日であればフェリーは1日に9本出ているようです。土日に来た方がよかったのかも・・・。


1時間30分後、フェリーがやってきました。

船内は1階と2階に分かれており、収容人数は割と多そうです。
平日だからか人はそれほど多くはなく、ゆったりと竹生島へ。


フェリーから見る湖と空。

琵琶湖は広いですね。
この日はお天気も良く、気温も比較的暖かい日でした。

フェリーの中では、竹生島や宝厳寺や琵琶湖やその他滋賀県についての解説音声が流れています。
琵琶湖は世界でも有数の古代湖で、数百万年前は三重県の北部にありましたが、時間をかけてゆっくりと北に移動し、数十万年前に現在の位置に落ち着いた、等々、諸々の蘊蓄を聞いているうちに、竹生島に到着しました。


竹生島の様子。

島は小高い山のようになっており、そこには宝厳寺があるのみ。
山の斜面に沿って寺院が建てられており、西国のお寺恒例の階段が続くパターンです。


入口はいきなり鳥居になっています。

あれ、お寺詣りに来たはずなのに、ここは神社?と戸惑います。


階段の脇に目をやると、素朴な感じの如意輪観音が。

仏像があるということは、やはりここはお寺なのか。


こちらが本堂。

弁天堂とも言われ、弁財天が祀られているとのこと。
お参りしてきました。
弁天さんがご本尊というのはなんとなく珍しい気がします。
現在の建物は1942年に再建されたものです。


宝厳寺は西国三十三所のお寺の中でもかなり独特のお寺でした。
敷地内には鳥居が目立ち、寺と名付けられていますが、竹生島全体では神社としての印象の方が強い感じ。
勝手な印象で言うと、7対3くらいで神社のイメージが強いです。
仏教的な雰囲気はどことなく薄く、かといって古い神社のイメージかというとそれとも少し違います。
西国三十三所は多くは仏教信仰の場であり、お寺と仏像がメイン、しかし奥に古代信仰の名残を残すようにひっそりと鳥居と神社が現れる、というパターンがほとんどです。
中には那智の青岸渡寺のように、那智熊野大社(神社)の敷地内にお寺(青岸渡寺)があるようなパターンもありましたが、宝厳寺はそれとも雰囲気は少し違います。

宝厳寺は西国三十三所の第三十番札所で、起源は8世紀前半に遡ります。
開基は奈良時代の有名な僧、行基。
行基が弁財天を祀ったことに由来するという説と、行基が四天王を祀ったのが始まりという説があるようです。
おそらく古代の信仰の場に弁天さんが祀られ、仏教のお寺としてスタートした後、後の時代に島の中で神仏習合の独特の形態に変化したのだと思われます。
明治期の神仏分離において、国家から神社への統合を要求されましたが、宝厳寺はこれを拒否。
後で登場する都久夫須麻神社だけが神道として分離した形になっています。
なので、現代の神道としての神社感も少なく、かといって近世的な寺受制度の延長上にあるような一般的なよくあるお寺ともずいぶん違う。
古代以降連綿と続く神仏習合、独特の信仰の面影を維持しているお寺なのかもしれません。
神社仏閣ファンは訪れる価値あり、なかなか面白いお寺だと思います。


本堂の横にある石造りの五重塔。

鎌倉時代の重要文化財。
石塔で重文指定を受ける例は少なく、珍しいのだそうです。


その隣にはお不動さん。

仏教的な感じがしてきました。


棒術発祥の地。

竹生島流という流派があるようです。
調べてみると、現在は場所を経て長崎県に伝えられているのだそうです。


三重塔。

全体を撮影するスペースがないので、下から接写。
こちらも新しい建物で、2000年の再建。


三重の塔の横にある宝物殿。

中は別料金です。
釈迦三尊像や弁天像、その他涅槃図などがたくさん。
パンフレットの解説が詳細なので、文化財ファンは入る価値あり。


恒例のぼけ封じ観音。

このあたりは現代の西国のお寺と共通の雰囲気です。


いよいよ観音堂へ。

 

 

観音堂が、西国三十三所としての観音様、千手観音が祀られている場です。

しかし、観音堂は補修中でした。

あら残念。

入口の唐門が国宝とのことで、1602年の建物で古いものですが、残念ながら鑑賞できず。


こちらは船廊下。

観音堂から奥の神社へ向かう渡り廊下です。
天井が船を再利用してできているのだとか。


舞台の骨組み。

島の絶壁に建てらてているため、お堂の脇はこのような舞台になっています。


下から見たところ。


 

観音堂の奥には、都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)がありました。
都久夫須麻=つくぶすま=ちくぶしま=竹生島・・・?

こちらが本殿。

やはり1602年の再建で、こちらも国宝。

都久夫須麻神社は宝厳寺とは一応別物という扱いのようです。
明治期の神仏分離により、神社として扱われていますが、観音堂とは船廊下で繋がっています。
神仏習合の地が無理やり引き裂かれたような形になっています。


神社の南側には、龍神拝所と呼ばれる、龍神様をお祀りする場所があります。
ここでは鳥居に向かってかわらを投げる、かわら投げと言われるイベントを楽しむことができます。

これがその鳥居。

かわらを投げて見事鳥居をくぐれば、願い事が成就するのだそうです。
何人かの観光客の方がチャレンジされていましたが、成功している人はいませんでした。
ゲームの難易度は意外と高そうです。


地面には夥しい数のかわらの山が。


 

神社の横にあった、湖上安全を願うかっぱくん。

河童は人間を水中に引きずり込むイメージがありますが、その河童が人間のお船の安全を願うとはこれ如何に。


黒龍大神のお堂。

こちらも神様が祀られており、神社になっています。


鳥居をくぐって下界に戻ります。

この日は参拝者は少なく、のんびりと散策することができました。
やはり平日に来て正解だったかも。


船着き場の付近にはお店がちらほら。


 

飛び出し小僧・・・?

調べてみると、飛び出し小僧は滋賀県が発祥という説があるようです。
とび太くんと名付けられ、ゆるキャラ化しているのが面白い。


神社所有のお船。(竹生島神社の記載あり。)



弁天さんのキャラが描かれています。

神社のお船に弁天さん、現在における神仏習合の好例・・・?
キャラ化された弁天さん、なかなかいいデザインです。
そもそ弁天さんはインド由来の神様で、仏教の序列に編成され直したあと、日本で再び神様のように扱われてる点で、神仏習合との相性が良いのかも。



一通り参拝が終わり、船着き場で帰りのフェリーを待ちます。

船着き場には虫が多く、小さな虫が体にやって来て、思わず手ではたきたくなりますが・・・


この近辺では殺傷禁止との表示。
小さな虫と言えど、殺傷は我慢する必要あり。


フェリーに乗って長浜まで帰ります。

さようなら、竹生島。


ということで、竹生島と宝厳寺でした。
独特の雰囲気で、個人的にお気に入り度は高いお寺となりました。


西国三十三所は残り1所となりました。
いよいよ次回がラストです。
今年中にお参りし、満願を迎えたいと考えています。


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おまけ。
長浜の様子を少し。


フェリーの待ち時間の間、長浜駅の西側にある豊公園をウロウロしました。

長浜城。

豊公園の敷地内にあります。
1983年に復元されたもので、内部は歴史博物館になっています。
この博物館もまた訪れてみたいです。


公園から撮影した琵琶湖の様子。


 

かえるくん。


すずめさん。


動物のイミテーションを撮影していると、本物のねこちゃん登場。



こちらは長浜駅前。

長浜城は豊臣秀吉の創建。
秀吉の街ということのようです。


ゆるキャラ、三成くんの顔出しパネル。


 

長浜駅の東側は、景観が統一された美観地区になってました。
夕方、帰りの電車の待ち時間に少し歩いてみました。

黒と白の古風な雰囲気の建物が並んでいます。


いい雰囲気です。


細めの路地には商店が並ぶ。


北陸道の表示。


レトロな看板。



長浜の街も面白そうですので、そのうちまた訪れたいですね。