白鳳 -花ひらく仏教美術- | れぽれろのブログ

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8月18日の火曜日、奈良国立博物館に行ってきました。

奈良国立博物館は1895年(明治28年)の開館。
今年で開館120年を迎えるとのことで、開館120年記念特別展として
「白鳳 -花ひらく仏教美術-」と題された展覧会が現在開催されています。

自分が奈良国立博物館に行くのは3年ぶり、2012年夏の「頼朝と重源」展
(感想はこちら→
[「頼朝と重源」展])以来です。
この展示を鑑賞しに行ったのがちょうど3年前のお盆前の平日なので、
まる3年ぶりということになります。


今回もお盆過ぎの平日です。
3年前の記事では「人通りは少なかった」と書いていますが、
今年は平日でもそれなりに人通りは多かったです。
とくに外国の観光客の方がたくさん。
そして奈良公園といえば鹿。
海外の皆さんが日本の鹿に煎餅をやり写真を撮って遊んでいました。
外国人観光客がここまで増えたのは、3年前と今年の大きな差ですね。

一般に白鳳文化といえば、時代区分上7世紀後半から
平城京遷都の710年までの約半世紀を指します。
この時代は日本史上の激動の時代です。
6世紀後半以降、大陸では五胡十六国・六朝の分裂時代が終わり、
隋唐の集権体制が完成して行きます。
唐の集権化・官僚化・仏教化に倣い、日本国内でも7世紀以降徐々に
集権化・官僚化・仏教化が進んでいきます。
7世紀後半は、大化の改新・白村江の戦い・壬申の乱と、
対外的にも国内的にも大きな政変が起こった時期。
都も、飛鳥・難波・近江と目まぐるしく変わっていきます。
文化面では、前世紀までの巨大墳墓(古墳)による遺体埋葬の習慣を
中心とした文化は完全に姿を消し、飛鳥文化の時代を経て、
仏教を中心とした文化に完全に移行していきます。

今回の展示は寺院などの出土品・壁画・工芸品・歴史書など多岐に
渡っていましたが、やはり最も興味深いのは仏像の展示でした。
この時代は山田寺・薬師寺・法隆寺と、文化的に重要なお寺を中心に、
多くの仏像が制作された時期です。
今回の展示でも銅像を中心に多数の白鳳期の仏像が展示されていました。

今回展示されていた仏像は一部天部像などもありましたが、
ほとんどが如来像と菩薩像でした。
仏像は如来像と菩薩像で様相が異なります。
全体的に如来像は体躯がしっかりしており、白鳳期ならではの柔らかな身体を
残していながらも、肩幅は広く、全体的に身体は統制がとれています。
顔の表情も非常に端正で、童子・少年風でありながらも、
それでいて威厳が感じられるような風貌、とくに眉と鼻の形が印象的。
この代表が山田寺の仏頭、いわゆる「興福寺仏頭」として日本史の教科書などで
お馴染みのあの巨大な仏頭が展示されていました。

その一方で菩薩像はまた印象がだいぶ異なります。
菩薩像は小ぶりな像を中心にかなりの点数が展示されており、
それぞれに微妙に特徴が異なるため一概には言えませんが、
全体的に体は細く、手足も細く、その分顔がやや大きめに見える、
全体としてのアンバランスさから来るある種の可愛らしさのある像が多いです。
身体は全体的に細く柔らかで、お腹がぽっこりしている像が多く、
指先が綺麗で、服装は装飾的、腰をくねらせているような像もあれば、
顔が異様に大きく手が異様に小さいような、極端にデフォルメされている像もあり、
非常に面白いです。
表情は如来像のような端正さは少なく、穏やかな雰囲気が印象的。
可愛らしい像が多いですが、可憐な感じというわけではなく、
玩具的な可愛さとでもいうか、変な例えですが別の時代の絵画に
無理やり例えるならフラ・アンジェリコとか鈴木春信のような、
そんな雰囲気の像が多いです。

この菩薩像の中で最も巨大で、今回の展示のメインと思われるのが
薬師寺の月光菩薩立像です。
腰をくねらせて立つ柔らかな身体と装飾性いう菩薩像の特徴をがありながらも、
端正な表情と体躯とを兼ね備えている、もっと見応えのある仏像だと思います。
月光菩薩ほど大きくないですが、薬師寺の正観世音菩薩立像も素敵な仏像です。

如来+菩薩の三尊像では、法隆寺の阿弥陀三尊像も展示されていました。
今回面白かったのは、仏像(三尊像)と後屏と厨子が分解され、
別々に展示されていたことです。
これによりそれぞれをしっかりと鑑賞することができました。
とくに面白かったのが後屏です。
普段は前の三尊像に隠れてやや見えにくいと思いますが、
これが非常に装飾的で、曲線的で綺麗な模様が素晴らしいです。

仏像以外では、薬師寺の東塔相輪水煙が面白かったです。
薬師寺のお寺の屋根のてっぺんについている工芸品とのことで、
曲線的な装飾の中に笛やらの楽器のようなものを持った天女が3体。
この天女がちょうどこの時代の菩薩像のような体の細さと可愛らしさを
持っています。
この天女3体の装飾物が計4つ前後左右に取り付けられています。
普段はお寺のてっぺんにある工芸品なので、
なかなか見ることのできない貴重な展示です。

ということで、非常に楽しく鑑賞することができました。
開館120周年ということで非常に気合の入った企画だと思いますので、
とくに仏像に関心のある方はぜひ奈良に足を運んで頂きたいです。


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おまけ

奈良公園の鹿たち。

奈良01

奈良02

奈良03

奈良04