国立国際美術館 移転10周年① | れぽれろのブログ

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大阪にある国立国際美術館は、2004年に千里の万博公園跡地から
現在の中之島に移転されました。
2004年11月のオープンでしたので、まもなく移転10周年ということになります。
自分は移転後の2004年の11月に開催されていた
「マルセル・デュシャンと20世紀美術」を鑑賞して以降
この美術館が好きになり、その後何度もこの美術館を訪れており、
2004年以降の現代美術系の企画展は、ほぼすべて鑑賞しています。
(余談ですが、2004年11月はちょうどお札のデザインが変更された時期、
この「マルセル・デュシャンと20世紀美術」を鑑賞後に訪れた喫茶店で、
初めて野口英世の千円札をお釣りでもらったことを記憶しています。)

過去10年間の企画展はどれも面白い展覧会ばかりでしたが、
その中でもとくに印象的な展覧会を並べてみたいと思います。
今回はまずは前編、複数の作家さんたちの作品で構成された企画展の中から
個人的に印象的な展覧会、BEST8を並べます。
国立国際美術館の解説ページのリンクを貼っておきますので、
ご興味のある方は解説を参照ください。
(画像も国立国際美術館のページよりお借りしました。)
もし見に行かれた方がおられたら、そういえばこんなんだったな・・・と
懐かしんでください(笑)。


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・エッセンシャル・ペインティング (2006年)

影響を受ける部屋


http://www.nmao.go.jp/exhibition/2006/id_1003010000.html

海外の現代の作家さん13名についての、絵画作品の展覧会でした。
現代美術と言えば写真、彫刻、インスタレーションや映像作品などが多いですが、
この展覧会はタイトルのとおり、すべて絵画作品(ペインティング作品)でした。
(現代美術展ですべて絵画というのは、実は珍しい。)

個人的にとくに気に入った作家さんは、
ドイツのネオ・ラオホ、スウェーデンのマンマ・アンダーソン、
フランスのベルナール・フリズです。
上の画像はマンマ・アンダーソンの「影響を受ける部屋」という作品。

※3名の作家さんについて、過去記事のリンクを貼っておきます。
ネオ・ラオホ → 
マンマ・アンダーソン →  ※上から3人め
ベルナール・フリズ →   ※まんなかあたり


・液晶絵画 Still/Motion (2008年)
映像作品の展覧会。
映像作品をフラットな液晶画面に表示させ、
映像作品を絵画的に展示するという企画でした。

中国の田舎の村落と野犬たちの様子を6つの液晶画面に映し出し、
ドキュメンタリー風でありながらどこか非現実的な感覚を呼び起こす
楊福東(ヤン・フードン)の「雀村往東」
17~18世紀の静物画のような画面の果物にカビが生えたり
お肉が腐敗したりする様子を早回しで撮影した
イギリスの作家サム・テイラー=ウッドの作品「スティルライフ」「リトルデス」
などが印象的です。

その他、先日愛知県美術館の展示で猥褻物陳列罪にあたるとされて
警察から対処を求められた鷹野隆大さんの作品も展示されていました。
鷹野さんは男性のセクシュアリティを問題にした作品を制作される方。
今回の展示は男性器が問題になったようですが、
この液晶絵画展でも人間の脱衣映像が展示されていました。
(男性器にはボカシが入っていましたのでこのときは問題にはなりませんでした。)

なお、上の画像はジュリアン・オピーの「イヴニング・ドレスの女」という作品。
絵画のように見えますが、じっと見ていると女性が瞬きする(笑)
楽しい映像になっています。


・アヴァンギャルド・チャイナ -<中国当代美術>二十年- (2008年)

断橋無雪



文化大革命以降の中国の現代美術展。
絵画や彫刻などの展示もありましたが、映像作品がとくに印象的でした。

痛々しい苦行の様子を映像化した張亘(ジャン・ホアン ※亘はサンズイあり)、
女性のメイクをした男性が全裸で料理したり入浴したりする馬六明(マ・リウミン)
など、なんだこれというような映像作品が印象に残っています。
上の画像は楊福東(ヤン・フードン)の「断橋無雪」という幻想的な映像作品です。

この展覧会で最も強烈なインパクトの作品は
孫原(スン・ユァン)と彭禹(ポン・ユゥ)の「老人ホーム」という作品。
電動車椅子に乗ったリアルな老人たちのたくさん人形が、センサに反応して
自動的に動き回るという、強烈な作品でちょっと忘れがたいです。
中国の作品はスケールが大きい!


・絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から (2010年)


2006年のエッセンシャル・ペインティングの日本版といった展示。
タイトルのとおり日本のゼロ年代以降の絵画作品のみを並べた展覧会でした。
かなり規模の大きい展覧会で、地下2・3階をすべてを使用して
展示されていました。

個性の強い作家さんがたくさん並んでいましたが、個人的には、花澤武夫、
青木陵子、町田久美、このあたりの作家さんが強く印象に残っています。
※3名の作家さんについて、過去記事のリンク → 
  下の方に3名ともおられます。
なお、上の画像は奈良美智の「The Little Judge」という作品です。

この展覧会に関連したシンポジウムも聞きに行きましたが、
重鎮の評論家(?)の方々が、いわゆるポロック以降のモダニズム芸術の終焉を
嘆き、この展覧会の作品を前にしての混乱を口にされていたのが印象的です。
新しいもの、前の時代とは価値観が異なるものは、
いつの世も前世代の擁護者によって訝しがられる。
そんな瞬間を垣間見た展覧会でした。


・風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから (2011年)

アジアのコンセプチュアルアートの企画展。
2008年の「アヴァンギャルド・チャイナ」に続くアジアの特集。
日本の作家さんも登場していました。

とくに面白かったのが、タイの作家アラヤー・ラートチャムルーンスックの作品。
ミレー、ゴッホ、マネの作品を前にして、タイの田舎の村人が自由に語り合う様子を
映像化した作品。
最初は絵について語っていますが、そのうち会話がどんどん関係ない内容に
ずれていくのが異様に楽しい。
上記の画像もこのアラヤー・ラートチャムルーンスックの作品ですが、
会期中はこの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」のバージョンの展示は
ありませんでした。

この展覧会の会期中に3.11の地震と原発事故が発生しました。
自分は3.11の直後に見に行ったので、その分余計に印象が強い展覧会です。
震災後急遽展示された島袋道浩さんの「人間性回復のチャンス」という作品も
偶然が重なって印象深い作品でした。


・世界制作の方法 (2011年)

10番目の感傷


日本のインスタレーション作品の企画展です。
展示スペースをめいっぱい使った、スケールの大きな作品たちが印象的です。

とくに気に入ったのは、玩具や人形や日用品などが雪のような白い素材に
埋もれ、不思議な雪景色を再現した金氏徹平の「白地図」という作品。
そして、真っ暗な部屋の中を走る鉄道模型に光源が取り付けられ、
人形や日用品などの影が拡大されて壁に表示され、
非常に幻想的で不思議な光景を作り出す、
クワクボリュウタの「10番目の感傷」という作品が印象的です。
上に挙げた画像も「10番目の感傷」です。

その他、プラレールを床・壁・天井に貼り付けた作品、会期と同時進行で製作が
進み、作品がどんどん進化していくparamodelの作品も面白かったです。


・夢か、現か、幻か (2013年)

映像作品を集めた展覧会。
とくに気に入ったのは、饒加恩の「レム睡眠」、
ヨハン・グリモンプレの「ダイヤル ヒ・ス・ト・リー」。
こちらに感想を残していますので、ご興味のある方はどうぞ。 →  
上の画像はエイヤ=リーサ・アハティラの「受胎告知」という作品です。


・ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉 (2014年)

一番最近鑑賞した展覧会です。
とくに気に入ったのは、小西紀行、橋爪彩、淀川テクニックの作品。
こちらに感想を残していますので、ご興味のある方はどうぞ。 → 
上の画像は橋爪彩の「Chloris」という作品です。


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ということで次回に続きます。
次回は1人の作家さんの特集展示、BEST8を並べてみます。