骨と薬と小児喘息 | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

自分は指が細いとよく言われます。
先日、知り合い(女性)と話をしていて、その人の11号の指輪を借りて
付けてみると、するっと指(薬指)に入りました。
自分は指輪だとかは全然しないのであまりよく分かってないのですが、
指輪には号数というものがあり、号数が大きいほど輪っかも大きくなるのだとか。
で、男性で11号が簡単に入るというのは結構細いのだそうです。
指が細く見える男の人でも、たいてい11号が第2関節を超えることは
ないのだとか。
スルっと11号が入ったので、たぶん9号くらいでも入るのではないかとのことです。
(ちなみに女性で11号というと、少し太めなのだとか。)

自分は実は腕もかなり細い。
標準的なセロテープの輪っか(お分かりでしょうか?)が、手首を通り腕を通り、
肩のあたりまで来ます(笑)。
女の子などには「私より細くてうらやましい」などと言われますが、
実はそんなによくない。
腕が細いということは、すなわち力がない。
握力はいくらだったか、正確な数値は忘れましたが、中学生のときの
スポーツテストでは20kg以下だったのを覚えています。
なんというもやしっ子(笑)。
現在でも(ちゃんと測ってないのでよく分りませんが)30kgもないのでは
ないかと思います。
なので、重いものを持ち上げたりする肉体労働は全然ダメダメで、
職場でもある種の搬送作業だとか、オフィスのレイアウト変更などを行う際には、全く役立たずになります。

指や腕が細いのは、きっと骨が細いせいです。
自分の周りには、なぜか自称「骨が太い」と言っている女の子が多い。
その子たちが揃って言うには「あなたは骨が細い」。
腕を比較してみると、なるほど確かに女の子より骨自体が細い。
自分はおそらくやや痩せている方ですが、外観はあまり骨ばった感じはしません。
「いかにも痩せている」という感じはしない。
やせ形の男の子の手などを見ると、何というか、
骨々しい(←こんな日本語があるかは不明)感じがします。
しかし自分は骨っぽくなく、骨が太く成長していないような、
子供のまま時が止まったような(笑)そういう骨なのです。

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ところで、自分は子供の頃、小児喘息を患ってました。
風邪をこじらせたりすると、すぐゼーゼーヒューヒュー言いだします。
小児喘息というのは結構辛い。何が辛いって、とにかく息ができないことが辛い。
かなり意識的に呼吸をしないと、息ができない。息をするのがとにかく苦しい・・・。
イメージとしては、喉の奥にコルク栓を突っ込まれたような、
そんな感じを想像して頂けると、イメージが湧くかもしれません。

咳が出て辛いというのもありますが、(当然咳も物凄く辛いですが)
咳よりも気管支が収縮していく感じがとにかく苦しい。
酷いときは寝ていられなくなります。
眠れないというより、物理的に横になれない・・・。
仰向けと言うのは、意外と気管支を収縮させる体勢なのです。
なので、眠れないときは座ったまま眠る(笑)。
気管支に負担がかからない一番楽な姿勢は、うつむいて座る姿勢なのです。

病気が人を作る、などとよく言われます。
自分はスポーツが嫌いだとかいうことも過去に何度か書きましたが、
その理由はやはりこの病気のことが大きいのだと思います。
家の中に引きこもって、本なんかをダラダラ読み続けるのが好きだったとか、
こういう傾向は明らかに小児喘息だったからです。
性格のベースがのんびり屋さんなのも、
この病気の影響なのではないかと思います。

この喘息ですが、幸いにして小学校高学年の頃にはかなりよくなり、
中学生のころにはほぼ全快、発作を起こすこともなくなりました。
スポーツは好きになれませんでしたが、単純に歩いたり走ったりすることは
好きになりました。
しかし・・・中学3年の秋口から、強烈にぶり返しました。
自分は吹奏楽部だった(これも以前に書いた気がします)のですが、
中3の秋の引退直前に久しぶりに息苦しくなりました。
当然ですが、管楽器を演奏する(吹く)という行為と、喘息とは非常に相性が悪い。
「ほっといたらよなるやろ・・・」と思って楽器を続けていたのが間違いの元。
一気に重篤化しました。
とくに中3の年末年始は、治療がうまくいかずに、本気で死ぬかと思うくらい
重篤化し、勉強することもままならなくなり、結局志望校のランクを2つ下げて、
あまり行きたくなかった高校に行くことになりました。

発作は高校1年生のころまで続きましたが、これまたどういうわけか、
高1の終わりくらいから症状が劇的に良くなり、
高校2年にはほぼ回復し、これ以降、現在に至るまで、発作は起こっていません。
しかし、楽器はやめてしまいましたし、スポーツだとか長時間走るだとか、
呼吸器に負担をかけることは、現在でも怖くてできません・・・。
なぜか歩くことだけはやたらと好きで、
放っておくとどこまでも歩いて行く人間になりました。
ダラダラ歩くだけなら、おそらくそんなに呼吸器に負担は
かからないのだと思います。

喘息で怖いのは再発です。
20代は体力があるから大丈夫らしいですが、
30代後半あたりから体力が落ちてきて、結構再発する人が多いのだそうです。
職場でも自分の周りに小児喘息経験者は2人います。
そして2人とも30代の後半で再発し、治療を受けています。
自分も30半ば・・・再発が何より怖い・・・。
今でも、ときどき呼吸が気になりだし、「あれ、息苦しいかな・・・」と
ヒヤヒヤすることがあります。

人間は当たり前のように呼吸をしていますが、
無意識に呼吸ができるというのは、実はすごいこと。
自分にとって、「息ができる」ということは、すごく幸福なことなのです。

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インターネットなどを見ていると、小児喘息の治療方法は、
現在では比較的確立されているようです。
基本は吸入ステロイド薬で予防する。
発作時は気管支拡張剤(β2刺激薬など)を用いて発作を鎮める。
というのが一般的な治療法のようです。
とくに吸入ステロイドを用いた事前の予防が有効なのだとか。

自分が小学生の頃は昭和末期、80年代後半です。
この頃は当然インターネットなどなく、なかなか病気や薬についての情報は
簡単には手に入らない。
そしてこの時期は、今から比べると医師のアカウンタビリティは
実にいい加減で(笑)、何の薬を飲んでるのかよく分らないような状態でした。
(このあたり、当然お医者さんによる差はあったのだとは思いますが。)
母に連れられて病院に行っていましたが、母もあまり薬については
理解していなかったようでした。

今から振り返ると、おそらくβ2刺激薬の吸入や内服を
処方されていたのだと思います。
メプチンやメプチンエアーという名称は記憶にあります。
この薬を使うと、喘息の発作はマシになりますが、
動機がやたらと酷くなり、手足が極端に震えてきます。
で、結局動けない・・・笑。
喘息は苦しいですが、この薬も結構苦しい。
そしてこのβ2刺激薬も、何だかわかりませんが効かなくなる時がありました。

結局、発作を鎮めるのに一番有効だったのは、ステロイドの内服でした。
小学生当時はステロイドがどういうものだとか、
母も自分もあまりよく理解せずにに処方されていました。
大人になってから、記憶を頼りにあれこれ調べましたが、
おそらくプレドニゾロンを処方されていたのではないかと思います。
これが喘息にすごくよく効き、そして、β2刺激薬のように、
すぐに目に見えて現れる副作用も起こらない。

ステロイドは優れた抗炎症作用のある薬ですが、依存性のある薬で、
一定期間以上飲み続けると離脱症状が出るのだそうです。
つまり、この薬の依存体質になった場合、一気にやめることができなくなる。
その他、継続使用により様々な副作用が起こります。
とくに成長期に飲みすぎると、骨の成長を阻害し、
低身長になったりするのだそうです。
吸入ステロイドであれば、気管支への局所的な作用なので、
副作用はほぼ起こらない。
しかし、内服の場合は、全身に影響が出る・・・。
こういうことも全部大人になってから知りました。

内服ステロイドは、お医者さんによっては処方をためらうケースも
あったように記憶しています。
「このお薬を飲みすぎると骨がボロボロになるよ」と言われたことも、
記憶に残っています。
母はとにかく発作が見ていられないので、
内服ステロイドを処方してくれるお医者さんの元に通わせるようになります。
自分も発作がよくなる薬の方がいいな、と思っていました。

最初に骨が細いことを書きました。
自分の骨の細さはおそらく遺伝的な要素ではない。
親兄弟は普通の体格です。
自分は身長は162cm、しかし、弟や親戚の男子はだいたい170cmを超えています。
父は早くに亡くなったので身長は忘れましたが、
たぶん170くらいはあったように思います。
親戚一同が並ぶと、自分だけ身長が低い。
ひょっとしたら、この体格は幼少期の継続的なステロイドの服用が
影響しているのかも・・・。
今から振り返って、そんな風に感じることもあります。
もちろん小児喘息のせいで、成長に必要な運動量が
確保できていなかっただけかもしれません。
真因は分りません。

禍福は糾える縄のごとし。
自分の今の様々な感性は、明らかに小児喘息が影響しています。
そして、細い指や腕が好きと言ってくれる人もいる・・・。
病気と薬がなければ、きっともっと違う自分になっていたことだと思います。
健康であることは素晴らしいことですが、病気が人を変え、
そして場合によっては、人を精神的に成長させる一面もある。
薬など飲まなくていい方が良い。
しかし、苦しみの緩和のために薬を使うことは悪いことではない。
抗炎症薬は人類の素晴らしい発明だと思います。
薬がなければ、自分はひょとしたらここまで生きてこれなかったかもしれません。

病気と薬があったから、自分は今の自分なのだ・・・。
ときどき、そんな風に思ったりするのです。