シャルダン展 | れぽれろのブログ

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自分は大阪在住ですが、仕事(出張)のついでに東京に寄る時間があったので、
2つの展覧会を見に行き、さらに東京の街をフラフラと歩いてきました。
まずは展覧会の1つについて書きます。

三菱一号館美術館の「シャルダン展-静寂の巨匠」と題された
展覧会に行きました。

ジャン・シメオン・シャルダンは18世紀フランスに活躍した画家。
18世紀フランスといえばロココの全盛期。
ヴァトー、ブーシェ、フラゴナールといった巨匠たちが
華やかな絵を描いていた時代。
そんな時代に渋めの静物画や風俗画を描いたのがシャルダンです。
自分はロココ期のフランスの画家ではフラゴナールが好きなのですが、
実は地味目のシャルダンも同じくらい好きで、
今回仕事の途中で東京に寄ったのも、この展覧会に行きたかったというのが
実は一番大きな理由なのです。
フラゴナールとシャルダンは対照的な画家です。
華やかなフラゴナール。地味目のシャルダン。
今回展覧会で絵を見て感じたのが、シャルダンの筆致の丁寧さです。
とにかく大胆な筆致で人物などを描いていくフラゴナールとは、
この点でも対照的ですね。
天才的な筆さばきというのも魅力的ですが、
丁寧に描かれた絵も気持ちいいです。

シャルダンは主に静物画と風俗画を描きましたが、今回の展覧会によると、
初期に静物画を描き、やがて風俗画を描くようになり、
晩年になると再び静物画を描くようになったとのことです。
そして初期と晩年ではやや描き方が異なっているように見えます。

食器や果物が組み合わされて描かれた静物画が多いですが、
意外に多いと感じたのが、お肉を描いた絵、
それから動物(ウサギや鳥など)の死体を描いた絵。
(死体といっても食材なので、広義にはこれもお肉なのですが)
18世紀静物画の一般的な傾向なのか、それともシャルダンの傾向なのか、
よく分りませんが、とにかく肉が目に着く。
肉を多く描いた画家といえば、20世紀初頭のエコール・ド・パリの画家
スーティンを思い出しますが、何か関係があるのかな・・・?

話がそれますが、ウサギの死体の絵。
数年前に「液晶絵画展」で展示されていたサム・テイラー・ウッドの
「リトル・デス」という作品を思い出しました。
ウサギの死体が腐敗していく様を早送りで映像化した作品・・・。
ひょっとしたらこのシャルダンが元になっているのかもしれません。

肉のことばかり書いていますが、基本的には果物が多いです。
林檎、桃、葡萄、苺・・・。
おいしそうで幸せそうな絵です。

そして静物画は画面構成のための静物の配置が重要。
ナイフだけが手前に飛び出している作品もあります。おもしろい配置。
静物をどう並べるか、というところから実は作品が始まる。
この辺の配置を決定するプロセスは、ひょっとしたら抽象画の
画面構成を決めるプロセスに似ているのかもしれませんね。

さてもう一つの重要なジャンルは風俗画。
シャルダンの個人的に重要な特徴。
それは、風俗画に出てくる子供が可愛らしいことです。

「羽を持つ少女」
有名な絵です。円錐を逆にしたようなボディラインの女の子。可愛らしいですね。
この絵は2枚展示されていました。全く同じ作品が2枚あるのだそう。
もう1枚は制作年不詳なんだそうです。

「食前の祈り」
超有名絵画です。
2009年のルーヴル美術館展で大阪に来ていた絵です。
東京でめでたく再開。
お母さんと2人の子供の位置関係、トライアングルが良い感じ。
そして左下の男の子が異様に可愛い・・・。
この絵も2枚展示されていました。
エルミタージュ美術館にもほぼ同じ作品が所蔵されているとのこと。

「セリネット(鳥風琴)」
左側に窓、差し込む光。
中央に一人の女性。
奥の壁には画中画。
画面やや左側に描きこまれた鳥籠。
なんとなくフェルメールを思い出す絵です。いい感じ。

ということで、大満足しました。東京に寄ってよかった。
これだけのシャルダンの作品が一度に見られるは、非常に珍しいと思います。
そしてこの展覧会は残念ながら地方巡回も無いようです。
非常に貴重な展覧会だと思います。後々語られること間違いなし。
東京方面にお住まいの美術ファンの方は、ぜひともご覧ください。