歌劇「トスカ」 (バーデン市劇場) | れぽれろのブログ

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16日に、バーデン市劇場の来日公演、歌劇「トスカ」を観に
神戸文化ホールに行ってきました。

バーデン市はオーストリアのウィーン近郊の温泉街。
バーデン市劇場はそんな温泉街の歌劇場。
毎年秋になると日本の地方都市をあちこち巡回しますので
オペラ好きの方はご覧になられた方もおられるかと思います。
(余談。大正・昭和史が好きな方は「バーデン・バーデンの密約」なんかを
思い出されるかもしれませんが、あのバーデン・バーデンとは別の都市で
関係はないようです。)

自分はバーデン市劇場の公演が割と好きで、ほぼ毎年見に行ってます。
海外の歌劇場の来日公演はだいたいチケットが異様に高い
(5万とか6万とかするような公演も!)のですが、
バーデン市劇場は、数千円でそれなりの席、1万円も出せば
かなりいい席で観れるリーズナブルなオペラ。
それでいて、歌手陣は(若手が多いようですが)なかなかしっかりした人たちが
来るので、かなりお得感がある公演であることが多いです。
(さすがに超有名歌手が来るようなことはありませんが・・・)
演出も音楽もオーソドックスながら、しっかりとしたもの。
今回も大好きなプッチーニということで、楽しみにしていた公演なのです。

プッチーニの「トスカ」は、つい2か月前に西宮で
佐渡裕プロデュースの公演を観たところ。
なぜか今年は重なります。好きなオペラ作品なので、嬉しいです。

今回は2階席を取りました。中央やや右より。
前回の佐渡さんのときは舞台のすぐ右袖だったので、
オケを見るのには好都合でしたが、舞台の一部が見えなかったりとか、
不都合が少しありました。
今回は真正面からきっちり鑑賞。少し遠いですが、楽しく鑑賞できました。

佐渡オペラのときは、モダンでシンプルでモノクロな感じの舞台でしたが、
バーデンはいつものようにオーソドックスな舞台。
普通の19世紀風の建物・小道具が並びます。
モダン演出も楽しいですが、オーソドックスな舞台もよいですね。

そしてオケが良いです。
神戸文化ホールの2階席はオケがよく聞こえます。
(オケが聴こえすぎて歌手の声が聞こえないことも過去にありましたが・・・)
木管がよく聴こえます。良い感じ。
自分は、2幕の初めのフルートのガヴォットのメロディだとか、
カヴァラドッシの「星は光りぬ」の前に流れる
チェロとクラリネットの部分なんかが地味に好きです。
この辺りの演奏が綺麗だと嬉しくなってきますね。

主要人物3名(トスカ、カヴァラドッシ、スカルピア)もそれぞれ良い感じ。

カヴァラドッシはやや声が小さい気がしますが(2階席のせいかもしれませんが)、
丁寧な感じのテノールです。
しかし、2幕の「ヴィットリア!」の部分など、もうちょっとテノールの声量が
欲しいところです。オケの音が大きく、カヴァの叫びが聴こえにくい。
(前回の佐渡オペラの福井さんのよく通る声の印象が強いだけかもしれませんが)

トスカはかなり良い感じです。
2幕の有名な「歌に生き、恋に生き」
ベタな部分ですが、自分はここで何だか訳がわからないくらい感激しました。
(←こういうことがよくあるやつ、そしてすぐ泣くやつ)

そして、スカルピア。自分はこの変態警官のキャラが大好きです。
とくに2幕、スカルピアの鬼畜ぶりが遺憾なく発揮される幕です。
このスカルピアさん、2幕でいきなりムチを手にして登場します(笑)。
密偵に失敗したスポレッタをムチを振るって脅す(笑)、スカルピアはこうでないと!
この2幕は、短調の讃美歌がバンダで聴こえてくるのが薄気味悪かったり、
不気味な音楽、激しい音楽が続きます。
プッチーニにしては気持ち悪い音楽。しかし妙に好きな部分です。 
カヴァラドッシが拷問にかけられ血まみれに。
そして、スカルピアがトスカに迫る。
恋人の命と引き換えに、苦しみに泣き崩れるトスカを強姦する気満々。
女の子の苦しみに快楽を覚える鬼畜ぶり。
そしてそのことをわざわざ女の子に告白する変態ぶり。
しかし立ち居振る舞いは紳士的で、敬虔に神に祈ったりする一面も。
いいキャラクタですね(笑)
今回はスカルピア役の方もよい感じで、2幕はかなり楽しめました。

その他、3幕の牧童ですが、(少年ではなく)普通にソプラノ歌手でした。
この牧童役の方も地味に良いです。

1幕〆のテ・デウムですが、合唱隊は10名ほど。
こういった合唱隊は現地調達(日本人)のケースもありますが、
今回はバーデン市劇場の合唱隊です。
人数は少ないですが、なかなかのスケールです。かっこ良かった。

というわけで、今回も楽しい公演でした。
次のオペラは11月、二期会の「コジ・ファン・トゥッテ」を観に行きます。
これも楽しみです!


<余談>
バーデン市劇場の公演では、数年前まで毎年無料で
パンフレットが配られていました。
で、この無料パンフレット、何だか妙な味があって好きでした。
何というか、独特の緩さと変なこだわりがあって良い感じだったのです。
どんな感じかというと・・・
登場人物の名前を原語に忠実に表記しようとして(?)、
逆に訳の分からない表記になってたり、
 (例)
 リゴレット → rリィゴォレェットォ
 ドン・ジョヴァンニ → ドォン・ヂョvファンニィ  ※誤変換ではありません(笑)
ゆるーい感じのストーリー解説の漫画が載ってたり、
スコアが少し載ってますが、途中から休符ばかりになって
やる気があるのかないのかよく分らない感じだったり、何だか面白い。
しかし、今はパンフレットは有料になってしまったようです。
今もあんな感じなのでしょうか?
買っても良かったのですが、買ってまではいらないかな・・・(笑)