コレクションの誘惑(国立国際美術館) その1 | れぽれろのブログ

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昨日はお休みを利用して、中之島の国立国際美術館まで行ってきました。

国立国際美術館はおもに現代美術を扱う美術館で、
2004年に千里の万博公園から中之島に移転してきました。
千里にある頃は行ったことはなかったのですが、
移転して以降、すっかりこの美術館にハマってしまい、
特集展示はほぼ毎回見に行ってます。

関西でモダンアートを扱う大きな美術館は京都国立近代美術館もあるのですが、
京都の方は物故者が中心、同時代の作品を扱う大きな美術館は
ほぼ国際美術館のみなので、毎回すごく楽しみにしています。

さて、今回は美術館創立35周年記念として、
所蔵品(コレクション)の大規模な展示とのこと。
国際美術館ファンとしては知っている作品ばかりなのですが、
中には最近所蔵したと思われる知らない作品もありました。
前回の30周年(2007年度)のときは絵画が中心でしたが、
今回は絵画以外、とくに写真作品が多いです。全点の半分が写真!
以下好きな作品や、今回展示に力を入れている(と思われる)ものについての
感想など。

地下2階は絵画・彫刻などの年代別の展示。
20世紀前半パートでは、歴史上の超有名作家の作品が並びます。
ピカソ、カンディンスキー、エルンスト、デュシャン、
マン・レイ、パスキン、藤田嗣治・・・。
国際美術館好きにはお馴染みの作品たち。
初期ピカソの道化師の絵はいいですね。
フロッタージュ(こすりだし)技法を開発したエルンストの「博物誌」も
数点展示されてます。
おもしろい。

50年代になると抽象画が中心に。
60~70年代はコンセプチュアルアートの時代、不思議な作品が並びます。
今回はヨーゼフ・ボイスが多数展示されてました。
「カプリ・バッテリー」のレモンは会期中にちゃんと交換されるのかな・・・?
レディメイドも面白いですね。
そして、最近国際美術館一押しの(?)工藤哲巳のグロテスクな作品。
70年代の環境破壊への風刺でしょうか。
「放射能汚染マップ」がリアルで販売される時代からみると、
もはや郷愁の対象となるような作品。
その他、アンディ・ウォーホルの有名な「マリリン」も。

80~90年代になると、もはやなんでもありの時代。
彫刻(?)の素材も虫だったりレゴだったりサイコロだったり・・・(笑)
そんな中好きなのが、サイモン・パターソンの「おおぐま座」。
ロンドンの地下鉄路線図に歴史上の人名を重ねた作品。
科学者・芸術家・音楽家・俳優・聖人などの名前が路線図ごとに並びます。
人名と人名がクロスし、記憶と想像力がむやみに刺激される・・・。
なんかずっと路線図に見入ってる自分。
その他、今や超人気作家となった奈良美智さんの初期作品もありました。

2000年代。このパートが一番面白いですね。
過去10年の特集展示ごとに、いろんな作品を所蔵していってるのが分ります。
以下好きな作品の列挙。

小川信治
2006年に特集展示された作家です。
ベラスケスの絵から王女が消える。
フラ・アンジェリコの絵が左右に分割。
アジェの有名なパリの写真の女の子や建物が分裂する。
しかもこのアジェの写真はすべて鉛筆で模写してるとのこと。
おもしろい!

長谷川繁
2010年の「絵画の庭」に展示されてたもの。
バナナやカーテンや柱を並べた不思議な形。
具象的なものを併置して全体として抽象的に・・・。
こういう作品を見ると何が具象で何が抽象か混乱してきます。

ベルナール・フリズ
2006年の「エッセンシャル・ペインティング」に展示されてたもの。
すごく楽しい現代の抽象画。線の引き方がなんとも気持ちいい。
絵の具の混ざり方から、どういう順番で線を引いたのか想像したりしますが
よく分らない・・・なんだか騙された気分(笑)

Sun Yuan & Peng Yu
2008年の「アヴァンギャルド・チャイナ」に展示されてたもの。
壁の穴を覗くアフガン兵士。
アヴァンギャルドチャイナ展の記憶がよみがえり、もしや壁の向こうには
あの衝撃的な車椅子で走り回る人形たちがいるのか・・・と一瞬期待しましたが、
壁の向こうは全然別の作品でした。
(マイク・ケリーの綺麗な幻想都市)

会田誠
2010年の「絵画の庭」で公開制作されていた滝の絵。
レオン・フレデリックの「流れ」を一瞬思い出しますが、
こちらは裸の子供たちではなくスクール水着娘。
ゼッケンには水に関する名前が。
中央の子はフェルメールの「真珠の首飾りの少女」のポーズをとってます。

町田久美「雪の日」
2010年の「絵画の庭」に展示されてたもの。
この人の描く線がすごく好きです。見ていて気持ちいい。
丸坊主の子供のポッケからウサギの耳。か、かわいい・・・。

須田悦弘
2006年に特集展示されてたもの。
会場のどこかにこの人の作品が隠されています。
うっかりすると見落とします。
可愛らしい作品なので、ご存じない方はお見逃しすることなきよう。

展示は地下3階に続きます。また次回。