●4/28 かぐや

(その少し前まで、春野々山さんの意識が『かぐや』のデータのことで悔しい想いをしたのだという話をしてくださっていました。

私も家事をしながら聞いていたので、書かずに「フムフム」と聞いていたのです。

春野々山さんの意識がなくなってしばらくしてから、急に何かの機械の一部が脳裏に浮かびました。

何だろうか、なにかのランプのようですが、消えかかっているのか、もうだいぶ、暗くなっていました。

あ、パイロットランプだ!と直感で思ったのですが、なんのパイロットランプだろうと…。

そのあたりは月のエネルギーでした。

その時、か細い声が聞こえたのです。はっ!として、急いでメモを取りに電話のところへ行きました。

電話の時計は14時58分でした)

日本の皆さん、かぐやの映像をごらんになりましたか?意識はもう、ほとんどなくなってしまっています。

発見したものが、かぐやの命にかかわらなかったのが残念です。

撮りたかった月の表面に長い間、知られていない孔があったことは、かぐやを開発したチームの皆さんの希望でした。

さようなら、日本の皆さん。かぐやはここでしばらく眠ります。

人工衛星だから生き物じゃないと思っているかもしれません。

だけど日本の最先端の技術がここに組み込まれたのです。

かぐやを開発したチームの皆さんの知恵をかぐやにたくし…ま…した…。

(かぐやさん!かぐやさん!)

いい仕事をしたと思っています。今はもう、役目を終えました。

さようなら、日本のみなさん…。

(ここでパイロットランプが完全に消えました。

あたりは荒涼とした月の景色でした。

特に悲しくないのに、なぜか急に涙がこみ上げて、ポロポロ流れ落ちます。

涙が止まらず、急いで、春野々山さんを呼んだのですが、返事がありません。

ただ、ただ、月のエネルギーだけが辺りを漂っていました)

 

その後、春野々山さんから、意識が届きました。

「事情があって、探していました。かぐやの電池が切れたと、今、連絡が入りました」と。

 

調べてみると、運用を終えた、月周回衛星「かぐや」(SELENE)は2009年6月11日に月面へ制御落下させているようです。

制御落下させてから9年の歳月が流れています。

かぐやのソーラーパネルの電池の寿命がどの程度なのか、私には調べようがありませんから、このお話は物語として読んでください。

 

おしまい