しゅんぽ(春畝)先生の今 その15
【これも史実とは違うかもしれませんから、物語として楽しんでください】
●6/1 しゅんぽ先生
(午前中に降りてきた)
書いたことの事実を疑っているのでしょ?
(はい。私では、もう調べられません)
人の言葉の裏側には隠された事実があります。
しゅんぽの辿って来た道のりはそういった危険の中に自分を貶めてきました。
体と壊すこともしばしばです。
(←調べてみると、若い時は剛健だったようですが、還暦に近いころには体を壊していたようです)
そういう時はかえって、家に帰らないようにしていました。
お梅や子供たちに心配かけたくなかったからです。
家とはいつも距離をおくようにしていました。
机も仕事の場にしたくなかったのです。
言葉にして、伝えられないことも多く、お梅もそのことは十分承知していました。
いつものように飛び出す博文を見送ってくれました。
伝えることは、今度いつ会えるかわからないけど、行ってくるよ。という言葉でした。
そんなこともありました…。
(しゅんぽ先生はそれでよかったんですね)
操られながら、彼らの動きを見ていました。
強い意識で、自分の体を乗っ取られ、隠れたところで、いつ死ぬのかわからぬ自分を慰めていました。
五条天神社のことを調べていましたね。
(はい。あの扁額がなぜ、あそこにあるのか社務所に伺ったら、そこの瀬川宮司と伊藤博文は昔から懇意にしていたと言われました。
五条天神社を調べましたか?
(上野は調べましたが、西暦100年ごろの弥生時代に建てられた、古い神社なようで、どこから来たのかはわかりませんでした)
●6/1 しゅんぽ先生
(しゅんぽ先生の物悲しいエネルギーが私には負担になっていた。なにを憂いているのだろう?
しゅんぽ先生、なにか寂しいことがあるんですか?)
強い自分に従ったのです。でも、今はただ、その自分でない、自分に生かされていた生前がなんだったのか、いろいろ考えていたのです。
強い自分のいない今は、もう生きていいない自分ですから、生まれ変わることもないと思っています。
(生まれ変わる前にスープを飲むらしいですよ。←「生まれ変わりの村」森田健著に書いてありました。
そのスープを飲まなければ、前世を覚えていられるようです)
スープですか?
(はい。死後の世界にある『忘却のスープ』らしいです。しゅんぽ先生は生まれ変わる前に飲みますか?)
体に何か入れるのはもう、たくさんです。
千春さんには失礼なことばかりを言ってしまいました。
(何か言われたっけ?言われたかもなぁ~)
何度も生きた心地がしませんでしたから。見えない糸に操られて走り抜けてきました。
イギリスに着いたときに、博文は実験施設のある家に行きました。
そこのホストは大学教授でカガクを担当していました。
(科学?化学?)
ケミストリーです。
(ああ、化学ね!)
錬金術師だったようなんです。博文のついた家の地下室には、入ってはいけない部屋がありました。
さすがに、使われていないようで、息ができないくらい湿気が凄く、咳がでるようなところでした。
マスターはこの扉の向こうにいる者は、ここと世界が違うところに住んでいる者だと言いました。
いくらか英語を理解していた博文ですが、その意味が分かりませんでした。
一回もその部屋の中を覗くことはありませんでした。
マスターの学校へ入って、最初の時間に〝理屈はない〟と教わりました。
さすがに、博文、井上もんた(?)以外の者たちは英語の意味がわからなかったようです。はにかみながらの授業でした。
洋服を着ていったのは博文ともんただけでしたから…。
(あれ?私が勘違いしてるのかな?どうして、みんなは洋服を着ていなかったのですか?)
先生も異様な雰囲気での授業でした。
苦労した水夫の手伝いよりも、よく。
マミーの作る食事は美味しく感じました。
小林という…。
(「小林」とは誰ですか?)
さいとうはいますか?
(「さいとう」ですか?調べてみます。
あ~、私の降ろし間違いですね。「野村」と「えんどう」ですかねぇ~?)
任務の関係で博文は町の調査をしました。
見る物、聞く物がすべてが別世界でしたから、いったいこの町は…。
(Zzz…はっ!あ、もうこんな時間になってしまいました。寝なければ…)
一旦おしまい…。
(Zzz…)
〝しゅんぽ(春畝)先生の今〟つづく。