善行章とは、何か良い善行をして与えられるものではなく、勤務年数を表す記章で海軍の下士官・兵に付与されます。善行章には普通善行章、特別善行章の二種類があります。
■普通善行章
普通善行章。「Very Good」をひっくり返したのがマークの由来だという説も。
普通善行章は、海軍の下士官・兵が入隊から起算して3年以上品性方向に勤務すれば、善行章1線が与えられます。以降、善行章は3年ごとに1本付与されました。
4線以下は1線につき一日3銭、5線以上は何線でも一日15銭の手当てが付きました。
善行章1本、3年以上勤務の下士官。善行章の下の階級章は、昭和17年4月の改正以前の旧式のもの。
善行章2本、6年以上勤務の下士官。明治には善行章は左腕に付けていましたが、大正7年より右腕に変りました。
善行章3本、9年以上勤務のベテラン下士官。
■特別善行章
特別善行章。山形の上に金の桜花章 が付いている。
「特善」とも呼ばれ、勇敢な行為があった場合、又は抜群の勤務成績を残した下士官・兵に授与されます。
特善は2線以下は1線につき一日5銭、3線以上は一日15銭の手当てが加算されました。
特善。見えにくいですが、山のてっぺんに桜花章 が付いています。
■善行章の海軍俗称いろいろ
【善ツー】
兵で善行章2本付けた者。つまり6年以上たっても下士官になれない落ちこぼれの兵。しかし兵には敬礼を要求し、下士官同様に振る舞いたがるので、厄介者扱いでした。
【お提灯】
善行章のない一等兵。二等兵から一等兵へは二年半で進級できるため、「お提灯」は順調に出世をしている状態と言えます。
「お提灯」:一等兵の官職区別表(昭和17年以降)に善行章なし。
【ボタ餅】
善行章のない下士官。「ボタ餅」は昭和16年頃までの傾向でしたが、逃亡など違法行為を行うと、善行章をはく奪されました。つまり落ちこぼれの下士官でした。
「ボタ餅」:下士官で善行章なし。しかし戦時下では1,2年で下士官に進級させ、善行章のない大量の「ボタ餅」下士官が誕生しました。
【洗濯板】
5本の善行章を付けたベテラン下士官。15年以上の経験を積んだ兵曹長(准士官)一歩手前の者。
・『海軍よもやま物語』、小林 孝裕、光人社、1980年
・『昭和の海軍』-目で見る日本風俗誌⑤、今戸 栄一、日本放送出版協会、1984年