現実の戦闘シーン | 太平洋戦争史と心霊世界

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海軍を中心とした15年戦争史、自衛隊、霊界通信『シルバーバーチの霊訓』、
自身の病気(炎症性乳がん)について書いています。

空爆を受ける「武蔵」 

   空爆を受ける「武蔵」



 ジパングでも戦闘シーンで手足がちぎれ飛んで、うわ-、ちょっと・・と言う場面がありますが、漫画なのでまだ描き方が穏やかだと思います。ここでは実際の戦闘場面を紹介します。『戦艦武蔵の最期』を書いた筆者が、戦闘中の「武蔵」甲板で見た光景です。残酷描写にちょっと弱い方はご注意を。

 

 「起(た)ちあがったおれのすぐ眼のまえに、下士官が一人うつぶせで倒れていた。破片で後頭部をさかれ、そこからさっきまでものを考えていたうす赤いどろりとした脳液が、襟首をつたって甲板にくず粥のように流れていた。

 見ると耳たぶの下にも、砕けた瓦のような小さな破片が突き刺さっている。抜き取ってやろうと思って、さわってみると、それはとび上るほど熱かった。

 

 おれは甲板の血のりに足を滑らせながら、できるだけ頭を下げて自分の配置のほうへ這うようにして進んで行った。ときおり足の裏にぐにゃりとくるのは、散らばっている肉のかけらだ。それは甲板だけではなかった。まわりの障壁や通風筒や砲塔の鉄板にも、ちぎって投げすてた粘土のようにはりついていた。

 

 めくれあがった甲板のきわに、焼けただれた頭の片がわを、まるで甲板に頬ずりでもするようにうつむけて、若い兵隊が二人、全裸で倒れていた。一人はズボンの片方だけを足に残していたが、いずれもどっからか爆風で吹き飛ばされてきたものらしい。

 

皮膚は、まともに受けた爆風で、ちょうど一皮むいた蛙の肌のようにくるりとむけて、うっすらと血を滲ませている。とっつきの高角砲座の下にも何人か転がっていたが、一人はひっくり返った銃身の下敷きになって、うわむきにねじった首を銃身でジリジリ焼いていた。

 

 そこから少し先へ行くと、応急員のマークをつけた、まだいかにも子供っぽい面長の少年兵が、なにかぶよぶよしたものを引きずりながら、横むきになってもがいていた。歯を食いしばって振っている顔は、すでに死相をうかせて土色だった。

 

見ると、腹わたをひきずっているのだった。腹わたは血につかって彼の足もとにもつれた縄のようにひろがっていた。うす桃色の、妙に水っぽいてらてらした色だった。

 少年兵は途方にくれながら、わなわなふるえる両手でそれをかきよせ、もう一度それをさけた下腹の中へ一生懸命押しこめようとしているのだ。そうすれば、またもと通りになると思ってでもいるように・・・。

 

 が、突然力つきたようにのどをぜえぜえ鳴らして、赤くふやけたような自分の腹わたのうえに顔をうめてしまった。彼は、一、二度ぴくっと痙攣してそれっきり動かなくなったが、息をひきとる瞬間まで、指先でその腹わたをまさぐっていた。」