米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題をめぐり、就任後初めて沖縄を訪問した鳩山由紀夫首相。昨夏の衆院選で移設先を「最低でも県外」と繰り返し、沖縄の期待感を自ら高めておきながら、ついに県内移設を示唆する結果に陥り、ひたすら低姿勢の「おわび行脚」に終始した。「絶対に納得できない」。県議会や地元市町村長、地域住民からは首相の「軽すぎる言葉」に怒りと不信の声が上がった。

 午後2時半すぎ、普天間飛行場に隣接する普天間第2小学校の体育館。地域住民約100人を招いて開かれた対話集会では、鳩山首相への怒りの声が渦巻いた。

 ベージュを基調とした、アロハシャツに似た沖縄独特のかりゆしウエアに身を包んだ鳩山首相に対し、同小PTA会長の女性は悲痛な声で訴えた。

 「保護者が願うことはただ一つ。住宅地に近接する世界一危険な基地をなくしてほしい」

 これに対し、鳩山首相は「北東アジアを考えたときに日本とアメリカの安全保障を考えざるを得ない。沖縄の皆さんに負担をお願いせざるを得ないのが今の政府の考え方。できる限り負担が過重にならないよう努力したい」と低姿勢を貫いた。

 同小教諭の下地律子さんは「騒音をどうにかしてほしい」と話し、6年生10人が書いた首相への手紙を直接手渡して直談判。鳩山首相は「しっかり読ませていただく」と応えるだけだった。

 不信がピークに達したのは、鳩山首相が硬い表情で「しばらくの間、沖縄の皆さんにご負担をお願いしなければならないのは本当につらい。皆さんも本当につらいと思うが…」と話した瞬間だった。

 「当然です」。突然、言葉を遮るように女性の鋭い声が上がった。

 「もう来るなといわれるかもしれないが、また皆さんの気持ちを学ぶ機会をいただきたい」。目を力なく泳がせ、集会を締めくくろうとする鳩山首相。納得いかない様子の女性が首相に詰め寄り、スタッフから制止された。

 退場する鳩山首相の背には「しっかりしろ」「友愛政治はどこにいった」などと住民からヤジと怒号が浴びせられた。

 集会に参加した会社員、宮城靖英さん(45)は「会場に来るまで実は県外移設案があるのではと期待していたが…。絶対に納得がいかない」と話した。

 集会に先立ち鳩山首相はこの日朝、仲井真弘多知事や高嶺善伸県議会議長らと面談するため那覇市の沖縄県庁に入った。入り口周辺に集まった約500人が「基地のたらい回しは許さない」とシュプレヒコールを上げる中、鳩山首相は車内から外に目をやる様子もなく敷地内へ。高嶺議長との面談では、歓迎の花束贈呈の際、司会者がわざわざ「慣例なので」と断りを入れるなど、歓迎ムードとはほど遠い冷ややかな空気が流れた。

 普天間飛行場の早期返還と国外・県外移設、そして名護市辺野古沿岸地域への新基地建設反対を求める要望書を高嶺議長から手渡された鳩山首相は「『最低でも県外』と申し上げたことは事実。その言葉の重みはしっかりとかみしめなければならない」。

 「公約」を実現させる展望が全く描けなかった沖縄訪問。言葉だけが“空回り”を続けた。

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