聞き違いでしょうか?いいえ菅首相だから・・・。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【from Editor】「首相要請」の責任




「辞める」

 と言ったのに、居座る。

 「止めた」

 と言うけど、

 肝心なときは動かす。

 聞き違いでしょうか。

 いいえ、菅直人首相だから

                  ◇

 菅首相の「言葉」が混乱・混迷の火種になるのは、肝心なことを明確に語らず、後になって不明確な部分に意味を与えるからだ。

 「一定のめど」が原発の冷温停止を指すなら、最初からそういえばいいではないか。

 浜岡原発を止めた異例の「首相要請」も同じだ。

 表向きは「原発の運転を止めさせた」とみえる。しかし、中部電力が要請を受諾した際、首相側の海江田万里経済産業相は東海地震対策完了後の運転再開を確約し、その後の安全についても「国が責任を持つ」と明言した。

 その約束が守られれば、浜岡原発は運転しながら東海地震を迎えることになる。民主的な手続きを踏まず、首相は独断で地震発生時に震源域の原発を「動かす」という道筋を選択したのだ。

 一部の政治家やマスコミが「英断」と評したこともあって、世論はおおむね、首相要請を肯定的に受け止めている。だが、「地震時には原発を運転する」と認識している人は多くはあるまい。

 菅首相は東海地震の切迫性ばかりを強調し、地震対策完了後の原発の運用については何も語っていない。自らの要請なのに、責任を伴う部分は海江田経産相に説明させた。思いつきの要請にしては、責任回避の準備は周到だ。

 浜岡原発が特殊な立地条件にあることは事実だ。だからこそ「原子炉の運転を止めた状態で東海地震を迎える」という選択肢について、反原発・脱原発を主張する人たちと、原子力の平和利用を推進する立場の人たちが十分に議論する必要があったはずだ。

 菅首相は法的な根拠も国民への説明もなく、唐突な要請によってその機会を捨て去った。その責任は非常に重い。

 今の菅首相の最善の選択肢は一日も早く首相を辞めることだが、このままでは、浜岡原発の運転再開時に首相要請が混乱の火種になりかねない。民主的な手続きを踏んでいないが故に、「首相の責任」が行き場を失うことになりはしないか。辞める前に責任の所在を明確にし、浜岡原発の運用についても国民にきちんと説明する責務が、菅首相にはある。(科学部編集委員 中本哲也)