【東日本大震災】
東日本大震災で打撃を受けた宮城県女川町で16日、男女14人が民家に身を寄せ合って暮らしているのが見つかった。発生から100時間以上が経過しての“生存確認”だが、全員が「自立できる」などと話して救助を拒否した。他にも住民が自宅にとどまるケースはあり、自治体などは津波の再来の危険もあるとして退去を呼び掛けている。
16日午前10時半ごろ、宮城県女川町宮ケ崎の民家2階で、男女14人が身を寄せ合っているのを救助隊が発見した。町の職員らが避難所への搬送を勧めたが「生活できる」と拒否した。
同町災害対策本部によると、発見されたのは男性7人、女性7人の計14人で、いくつかの家族が集まっているとみられる。海面からは少し高い場所に立つ家屋で、職員らの「余震が来たらもたないかもしれない」「津波がまた来たらどうするのか」との説得にも応じていない。ただ、体調が悪い被災者が出た場合は病院へ搬送することで合意したという。
災害対策本部職員は「嫌だというものを無理矢理引っ張ってくるわけにもいかない。本人たちの意思を尊重するしかない」と話す。
「妻がひょっこり戻ってくるかもしれない」。ほぼすべての建物が損傷した宮城県石巻市湊地区で、自動車整備業、鳥畑真一郎さん(61)は話す。妻は津波発生直前に「友人と買い物に行く」と出掛けたまま帰ってきていない。かろうじて浸水しなかった2階の一部で生活している。
台所などにあった水と食料は残りわずか。だが「結婚して38年。家の再建はもう無理だろうが、とにかく妻が帰るまでは」と離れる考えはない。
同様に居残っている女性は避難所に人が多すぎることや配られる食料が少ないことを理由に上げる。「家のそばにいる方がずっといい」とし、近隣の家族と共同生活をしている。
こうした事態に、県担当者は「強度が守られている場所にいてほしい。食料を家へ配って歩くのは危険すぎる。懸命にサポートしていくので協力願いたい」と話した。