『真田丸』第42回『味方』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

まずは何よりも、先週の『丸会』に御出席下さいました皆さまに篤く御礼申しあげます。本当に、本当にありがとうございました。私的な反省点も含めて、当日のレポートは近日中にUPする予定ですので、今暫くお待ち下さいませ。さて、その『丸会』のために週末休みを取ったおかげで、久しぶりの『本丸』鑑賞となった今週の『真田丸』でしたが、実をいうと『丸会』の終了と共に完全に燃え尽き症候群になってしまったので、今回は短目の感想記事になります。当分は気合の入った記事は書けそうにないかも。まぁ、今までに気合の入った記事を書いたことがあるのかと聞かれたら、一言もないのですけれども。『味方』というサブタイにも拘わらず、心から打ち解けられる味方が殆どいないという軽いサブタイ詐欺の内容でした。敵味方の区別なしに騙くらかしてきたスズムシの因果が子に報いたという気がしないでもありません。今回のポイントは4つ。

 

1.白斎は誰だ?

 

織田有楽斎「真田殿が来てくれれば、我らの勝利は疑いなし!」

真田幸村(コイツ胡散臭ぇ……)

 

一目で伝わる胡散臭さを四方八方に振り撒く織田有楽斎。略して胡散く斎。半角斎は常真こと織田信雄で、心気く斎は大阪を退去した片桐且元でしょう。まぁ、じきに半角斎も大坂城からいなくなるのですけれどもね。ちなみに、胡散く斎もガッツリと家康側に内通してします。もうダメだ、この豊臣家。胡散臭さでは他のメンツも負けていません。

 

大野治長「真田様におかれましては、特にお一人部屋をご用意致しました」

 

初めて大坂に来た時とは真逆の厚遇を受けるのですが、これは先回のラスト付近で幸村に軽くメンツを潰された大野治長のよるササヤカな復讐でしょう。幸村を露骨に優遇することで、他の牢人衆との間に溝を作る魂胆と思われます。尤も、陪臣とはいえ、一万六千石の所領を有していた後藤又兵衛が相部屋で、一万石の毛利勝永が一人部屋という、よく判らない判断基準を慮るに、単純に大野治長は後藤又兵衛が嫌いだけかも知れません。又兵衛は本作の牢人衆の中で一番面倒臭い奴ですからねぇ。弟の主馬も胡散臭そうですが、雰囲気や立ち振る舞いが寅之介を彷彿とさせるので、実は文吏型≒三成タイプのお兄ちゃん大好き弟という可能性もあります。

 

 

2.今週のMVPたち

 

徳川家康「真田が?」ガタッ

本多正純「去る九日、僅かな手勢と共に大坂城に入ったとのことでございます!」

徳川家康「……それは父親か? 息子か?」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

いやぁねぇ、お爺ちゃん。

安房守はもう死んだでしょ。

 

晩年の秀吉同様、家康も結構耄碌しています。既に幕府の実質的主導者は秀忠になっているようですね。家康の首級を討ち取って御覧にいれますとドヤ顔で語った幸村ですが、この場面から察するに天下の大局を見る目には乏しい模様。常に時勢に対する周回遅れのランナーであり続けたスズムシに似ています。お兄ちゃんは父親の長所も短所も似ませんでしたが、幸村はスズムシの美点も欠点も受け継いでいるのですね。やはり、この兄弟は二人揃ってこそ、真価を発揮するのでしょう。

逆に現実の問題や天下の動静を冷徹に見据えているのは女衆。

 

大蔵卿局「あまり、真田を当てにしてはなりませぬ。如才ない男であることは私も承知しております。されど、あの者に武将として、どれだけの器量があるというのか」

 

阿茶局「先々の不安の芽は摘んでおくにかぎります」

 

お江与の方「大坂城には姉たちも千もおります。よもや、害が及ぶことはございませんね? 私が望むのはそれだけでございます。あとはどうぞ、気兼ねなくおやり下さいませ」

 

きり「昔、木曽義昌さまの人質になった時は、もっと酷い扱いでしたから」

 

まぁ、きりちゃんに関しては、彼女が足を引っ張らなかったら、とりさんも幸村も人質になっていなかったんじゃあないかという事案でしたが、それでも、現実を見据えたうえで楽観的であろうという姿勢は見あげたものでしょう。女性のほうが積極的に争え……もっと争え……と嗾ける大河ドラマって近年見かけませんでしたからからねぇ。

尤も、彼女たちも長年の経験が自信の裏打ちになっている訳で、

 

堀田作兵衛「わしは大阪へゆき、お前の父上の元で徳川と戦う(キリッ

すえ「……ええ(ドン引き

 

豊臣秀頼「図らずも親子で敵味方となってしまったが、嫁いだ以上、豊臣家の者として、どこまでも私についてくれる、と千は約束してくれた。出来たおなごだ(ドヤァッ

「……ええ(ドン引き

 

すえちゃんと千ちゃんの若いムスメたちは養父や夫の言動に困惑気味。登場人物の年齢差で現代的価値観との祖語を表現する手法は巧みでした。特にすえちゃんと千ちゃんの思考は表情のみで台詞にしてはいないところがグー。そんな訳で今週のMVPは女性陣全員に贈りたいと思います。

 

 

3.寿命マイナス五十年

 

真田信之「……ぅぐっ」ガクッ

堀田作兵衛「……あ、ありがとうございます!」

真田信之「いや、違う!」

佐助「いざ!」

真田信之「いや、違う! 待て! いや、違う! 作兵衛、待て! 作兵衛ぇ~!」

 

 

 

 

まさか、持病の発作をこういう風に使うとは思いませんでした。お兄ちゃんとしてはガチの発作なのに、作兵衛も佐助も温情と思い込んで、そそくさと退転してしまう場面は最高に笑った! この辺は如何にも時代劇でありそうなシーンを意地でも捻ってやろうという三谷さんの喜劇作家の意地を感じました。実際、作兵衛の一族は大坂の陣ののちに極めて厳しい処罰を受けている訳ですから、ここで作兵衛を温情で見逃したとしたら、前後の辻褄が合わないこと半端ないので、創作と史実の擦り合わせという視点からも巧い落としどころであったと思います。

しかし、お兄ちゃんは強かった。タイマンでは圧倒的有利を誇る槍を相手に、作兵衛の顔&脇&得物を斬る、斬る、斬る! 圧倒的じゃないか、お兄ちゃんは。強くて、頼もしくて、誠実。そりゃあ、秀忠もお兄ちゃんの来訪を聞いて、ウキウキ顔になる訳ですよ。秀忠にとってはお兄ちゃん>>>越えられない壁>>>お江与の方みたいでした。本作で真田家をいびるのは秀忠ではなく、お兄ちゃんに秀忠を取られたお江与の方の役回りになるのかも知れません。それはそれで斬新だな。猶、お兄ちゃんが佐助に『お前も風よりも早く走れなくなったか』と嘆息する場面がありましたが、お兄ちゃんのことを陰でボロクソに貶していたことを考えると、佐助が幸村入城の一報を故意に遅らせた可能性大。あれは確信犯だろ。

 

 

4.第二の……?

 

後藤又兵衛「我々は皆、豊臣家の御為に馳せ参じた者ばかりでございます。皆、徳川に歯向かったために禄を失い、そして、皆、殿様をお守りしたい一心で此処に集い申した」

 

黒田長政「お前は徳川とか関係なしで勝手に出奔しただけだろ」

 

作中でも作外でも一番の火種となったのが、本作の後藤又兵衛。特に上記の台詞を聞いた時にはお前は何をいっているんだと画面に突っ込んでしまいました。他の面々は兎も角、又兵衛は関ケ原とか徳川とか関係ないから。

しかし、何でしょうね、この違和感。後藤又兵衛は島左近と並ぶ骨太で男臭い武将というイメージが一般的と思っていたので、作戦計画の対立であれば兎も角、部屋割り云々から発した揉め事で総司令官の人事にウダウダと文句を垂れるのは納得できないですよね。あの世から、

 

真田昌幸「籤で決めればいいじゃん!(いいじゃん!

 

という声が聞こえてきた気がしましたよ。尤も、幸村との面識の有無とか、今後も密接に絡んでくること請け合いのキャラクターなので、故意に一般的なイメージからズラしているのかも知れません。敢えて視聴者を煽ることで、キャラクターの変化の落差を狙っている可能性もあります。要するに、

 

又兵衛は第二のきりちゃん

 

という目も残されているのではないかと。この辺、うまいこと二匹目の泥鰌を捕まえてくれればいいのですが、残り話数を考えると難しいかなぁ。