『真田丸』第11回『祝言』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

真田昌幸「祝言の件、わしに任せておけ」
真田昌幸「祝言などやるワケないではないか」
真田昌幸「やっぱり、祝言やろう」
真田昌幸「祝言をやるといったな。あれは嘘だ。室賀を殺す策略だ」


真田信繁「……真田って奴は信用できん! 俺は今、途轍もない絶望と恐怖に襲われている! 今までは約束を破る側だったが、破られる側になって初めて判る恐怖と、やるせない絶望感! 真田家だけだ! 恐らく……決めた約束を平気で破っても大河ドラマの主人公を続けられる一族は! そんなもの、自慢にも何にもなんねー!」

というオチになるかと思いきや、信繁が受けた最大の衝撃は婚礼の席を血で汚された憤りではなく、父親の策謀を見抜けなかった自分の至らなさが最大の要因というオチ。何だ、この絶対他人を騙すマンは。三谷さんは『組!』の沖田といい、一見無邪気に見えるけれども、途轍もなく深い闇を抱えているキャラクターがお好きなようですが、今回の主人公も大概だな。
そうそう。『組!』の沖田といえば、藤原竜也さんが帝を演じているドラマ版『精霊の守り人』が始まりましたね! 綾瀬さんや吉川さんもよかったですが、帝、二ノ妃、星導師による宮廷パートが醸し出す舞台劇のオーラが半端ねぇ。特に藤原さん。平さんを差し置いてのトメクレジット表記に『おいおい、大丈夫か』といらぬ心配をしてしまいましたが、それに相応しい圧巻の演技でした。二ノ妃のエロさも堪らん。公共放送の九十周年記念作品とは思えないエロさ……ふぅ、実にけしからん。もっとやって下さい、お願いします。今年の大河ドラマにエロ要素を要求するのは、真田家に誠意を求めるのと同じくらいの無理ゲーなので、その要素は『精霊の守り人』で補うことにしましょう。勿論、エロだけじゃなくて、物語としても期待できそうだよ!
その『精霊の守り人』の感想を書くか書くまいか悩んでいる真っ最中なので、今回の大河ドラマ感想は短目&ポイント少な目構成。要素は3つ。


1.堀田梅という女

これまではきりちゃんという視聴者のヘイトを一身に浴びる相棒がいたため、左程クローズアップされませんでしたが、よくよく考えると梅ちゃんも生半な女性ではありません。先週の放送分で信繁から夫婦になって欲しいといわれた時の返事は、

「その御言葉、お待ち申しておりました」

でしたけれども、双方の身分を考えると『勿体のうございます』という言葉のほうが健気な印象になる筈なんですよ。それなのに『その言葉が聞きたかったCV:大塚明夫』という返事。これはもう、梅ちゃんにとっては、

記憶戻ったよ

ではなかったかと。信繁の求婚の契機となった子供の一件も、実は梅ちゃんによる偽装妊娠という話があるとかないとか。今回も信繁との結婚という既成事実を積みあげる際の最大の難敵・姑の薫との諍いを回避するべく、無駄な披露宴に固執しなかった点など、名を捨てて実を取る賢明な判断が随所で見られました。やだ、梅ちゃん怖い。いや、別に悪女という意味ではありませんよ。

御手洗潔「生き馬の目を抜く厳しい女の世界を知らないんだ。勝つか負けるか、得するか損するかだ! 人がうらやむような幸せは、ぼんやり待っていてもやってきはしない、自分の手でもぎ取らなくてはね。そのためには少々手荒にもなるさ。お行儀良くしていて女一人の淋しい老境にさしかかっても、同情されるだけで誰も救けてはくれないんだよ。彼女たちは、モラルというものの本質を本能的に見抜いている」

という言葉通り、自分の居場所は自分の知恵と力を駆使して勝ち取らなければいけないのが人の世。況してや、舞台は戦国ですからね。梅ちゃんは一人前の女性というだけで何も悪くありません。スケールが違うだけで、やっていることは真田昌幸と同じです……が、健気で慎ましい手弱女という、己の願望を投影した非実在女性の存在を信じている世の男ども(含む私)には、今回の内容で相対的にきりちゃんの人気があがったのではないかと思います。梅ちゃんは『祝言などどうでもいい。信繁殿の傍にいられればそれでいい』といっていましたが、実は信繁の傍にいられればそれで満足という価値観で動いているのはきりちゃんなんだよなぁ。そういう可愛らしいヴィジョンしかなかったから、信繁を梅ちゃんに掻っ攫われたワケですからね。梅ちゃんが『女』であるのに対して、きりちゃんは『女の子』ということでしょう。
一方、妻を迎える側の信繁。梅ちゃんに『家格上、おまえを正室にはできないが、おまえの他に妻を娶る気はない。事実上の正室だ。側室は祝言をあげないが、おまえとはキチンとした祝言をあげたい』と立て板に水を流すが如き流暢な口説き文句。傍から見ると一流の結婚詐欺師に思えなくもありません。唐突にカタコトの英語で喋り始めても違和感ないレベル。そのうえ、ナレーションで『史実では生涯で四人の妻を迎えることになる』と壮絶なネタバレをされる辺り、

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を想起したのは私だけではないでしょう。そういや、あの作品もラスボス(?)は内野さんでしたか。因縁やね。


2.真田家の肖像

以下、信繁の結婚に関する一族郎党家臣団の反応。
まずは『どこまでやった? Aとかか?』とナチュラルに生々しい質問してくるお兄ちゃん。これは妻帯者の余裕というものでしょう。尚、とっくにCを越えていた模様。続いて、

真田昌幸「ねんがんの ひとじちを てにいれたぞ」

と喜ぶ実父。まさに鬼畜の極みですが、後半の展開は更なる地獄絵図となりました。おお、もう……そして、信繁の危惧通り、婚礼に反対する薫さん。『生まれた子が男児で、信幸に子が生まれなければ、その子が真田の棟梁になる』という薫さんの言葉そのものは正論なんだよなぁ。室賀さんと家康の繋がりを探るお兄ちゃんのウナギ問答といい、台詞だけを追うとマトモなことをいっているのに、演技とセットで見ると一流のコメディになっているのが如何にも三谷さんの作品です。
そんな薫さんを説得するために計画された信繁のオペレーション・リラクゼーション。南蛮渡来の香油とか些か都合がよ過ぎますが、信繁は序盤で安土に赴いていたので、その時に購ったのでしょう。一応、筋は通っていますが、一番の問題は当主の正室の部屋の天井に易々と曲者が侵入できたこと。真田家の警護体制はザルの極み。でも、相手がお東の方でしたら確実に殺られていたでしょう。色々とユルユルの真田家でよかったね、佐助。
しかし、今回の一番の見せ場はココでしょう。

高梨内記「若はおまえのことが好きではなかったのか!」

失恋

視聴者全員が画面に総ツッコミをしたであろう、内記殿の親馬鹿発言。きりちゃんの何処に信繁に好かれる要素があったというのでしょうか。真田家百人に同じ質問をしても、

100人に聞きました

こういう結果になるのは目に見えています。親の欲目って怖いよね。


3.海ヶ淵の雨

ナレーション「海ヶ淵の上田平に築かれていた城が完成した。これ以後、その城は真田の拠点となる。上田城の誕生である」

尚、建築資金を投じたのは徳川の模様。
ついでに徳川から離反したあとは上杉からも追加工事予算をせびった模様。


そりゃあ、当主の生命を狙われても文句いえませんね。斯くして物語は前半のコメディ路線から一転。ハードな謀略劇に移行します。寧ろ、後半のシリアス展開のための前半のコメディであった模様。大河ドラマですから、もっと長いスパンで物語の緩急をつけても文句いわれないのに、一話の中でもガクンと大きな落差をつけてきました。巧いなぁ。ちなみに上田城の再現率半端ねぇ。いや、当時の実物を見たワケではありませんが、城からの眺望が確かに上田城址から見た風景を思い出させるのですよ。春日山城といい、本作の城への情熱は尋常じゃない。
さて、内記殿の親馬鹿発言に次ぐ今回のメインイベントとなった室賀さん暗殺事件。自分が失恋したことを梅ちゃんに指摘されて漸く気づいたきりちゃんが、そのショックでフラフラッとヤバイ処に現れたので、室賀さんの反撃~きりちゃんが人質になる~梅ちゃんがきりちゃんを庇って死亡~室賀さん逃亡~という流れになると思ったのですが、通説に反して室賀さんが死亡。そして、梅ちゃん生存ルートという予想外の展開になりました。
全体的に室賀さんを討たねばならないという背景が判然としなかったのは否めません。宴席と表裏一体で進攻する謀略劇という点で、三谷さんの『組!』における芹沢鴨暗殺事件を想起させる内容でしたが、芹沢と近藤(というか土方&山南)ほどの明確な対立軸が見えなかった。単純に『殺らなきゃ殺られる』という戦国の価値観でOKという解釈も成立しますが、折角、西村雅彦さんをキャスティングするくらいでしたので、ジゴロVSツンデレというキャラクターありきの対立軸ではなく、小県国衆の背景が見たかったなぁ。まぁ、それをやっていると芹沢の死が半ば近くまでずれ込んだ『組!』のように、後半の構成がグダグダになりかねないのですが。
もう一つ、残念なのは室賀さんの黙れ小童が聞けなかったこと。自分を一太刀で仕留めきれなかったお兄ちゃんに、

室賀正武「やはり、小童よのう……」ガクッ

と言い残して死ぬという展開期待していましたので。今回は幼馴染に素直になれないツンデレが敗れるという点で、婚礼の当事者の信繁と梅ちゃんではなく、室賀さんときりちゃんがメインキャラクターとして描かれた内容であったと思います。


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