『真田丸』第5回『窮地』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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「大河ドラマ『武田信玄』再放送決定」

しかも、土曜日の夕方ではなく、日曜日の昼間の放送とか……今回の真田昌幸や総統閣下でなくても『畜生めぇ!』と絶叫したくなるレベルの味方撃ち。『ぼんくら官兵衛』の時の『独眼竜政宗』再放送といい、NHKの地上波とBSの暗闘を勘繰りたくなります。再放送自体は嬉しいのですが、せめて、もう一年早くやれなかったのか。流石にガッツリとぶつけられると色々と比較したくなりますので。時代的にはギリギリ重ならないとはいえ、本作には真田のおじいちゃんも出てくるしなぁ。私の中の幸隆は佐々木さんよりも橋爪さん。パッと見でも智謀98くらいありそうな雰囲気がたまりません。
さて、味方撃ちといえば、

「早くも暗雲立ち込める大河ドラマ『真田丸』 "NHKのドン”が異例の対応!?」

いやぁ、この記事メチャクチャ笑いました。何がおかしいって、一言も本編の内容に触れていないんですよ。そんなので暗雲立ち込めるといわれてもなぁ……海が汚いとか、会津弁が聞き取りにくいとか、ナレーションがオドロオドロシイとかいう記事のほうが(マト外れでも)内容に触れている分、遥かにマシでした。先週放送分の本能寺の変の月齢に突っ込むのであれば、まだしも賛同者を得られると思うのですが、そういう記事は単純に売れないのでしょう。そういや、当該シーンは再放送ではカットされたとか。まぁ、あれは解釈の違いとか、史実の簡略化とかいう話ではすまないので、妥当な判断だと思います。逆にいうとやってしまいましたなぁという点はあっても、それが即、視聴を辞める契機にならないのはありがたい。そんな本作の感想記事、今週のポイントは4つ。


1.二条城の戦い

何気に今回最も重要なシーン。『本能寺の変』の『神髄』というと妙な響きですが、この騒動で織田家が被った最も甚大な被害は信長の死よりも、信長と信忠がほぼ同時に消されたことでしょう。信長が事前に指名していた後継者が存在しておれば、或いは織田家による天下取りの目はあったかも知れませんが、それがいなくなってしまったがために、有力家老が各々推す人物を擁立する事態に至りました。その結果、担がれた側よりも担いだ側の発言力が拡大。ものの見事に織田家は四分五裂してしまいます。乱世だからね。仕方ないね。
ある意味で本能寺の変よりも重要度の高い戦いをチラリとはいえ、挿入してくれたのは祝着至極。そういや、三谷さんは『清須会議』でも二条城の戦いを描いていたなぁ。ナレーションでも『日本全国にその名を轟かせた親子が突然消えた』と語ったように、ここは三谷さんなりの歴史への拘りかと。


2.伊賀ウォーカー 二泊三日

徳川家康「もし、万一、生きておられたらどうする! あとでわしが置いて逃げたことが知られてみよ! 明智なんかよりよっぽど怖いわ」

成程、こういう思考もアリかと感心する反面、金ケ崎で信長に置き去りにされた過去を鑑みると、そんなに気にしないでもいいんじゃないのかと思いますが、家康にとっての信長は浅井、朝倉と戦っていた頃とは違い、僅かな粗相でも許されない絶対者として認識されているのでしょう。全面的に賛同できるか否かは別として、製作者が自分の頭で人物の思考・心情を考えているのが伝わってきました。これが何気に大事。
さて、今回の主人公は誰あろう、徳川家康……というか内野聖陽さんですね。この人の顔芸なしに今回の伊賀越えは語れません。独自の逃走経路を選ぼうとするアナ雪と別れる際の、礼儀は尽くしているんだけれども、コイツがいなくなってセーセーしたといわんばかりの押し殺した表情が秀逸過ぎる。他のドタバタコメディ場面も、この人のお陰で何とか保っていました……というか、ある意味で突き抜けたコメディになっていました。他にも、

服部半蔵「道中の地侍は懐柔した(懐柔したとはいっていない

というふうに結局は強行突破しか手段を持たないハットリ君の面白さよ。魔法といいつつ、拳で戦う今季のプリキュアのようですね。個人的には輿で酔う家康にどうでしょう臭を感じた。恐らく、乗り込んだ時は『今川義元じゃん! 竜造寺隆信だね! 立花道雪みたい!』と大はしゃぎしていたのでしょうけれども、登場した段階では不覚を喫する五秒前。あと少し、本能寺の変の凶報が遅れていたら、

徳川家康「……ごめんなさい」
本多忠勝「君は……立花道雪にはなれないね」


という会話が成立したかも。惜しい。惜しいといえば、アナ雪の退場。コメディ重視の今回の雰囲気にそぐわないという判断と思いますが、討ち取られるシーンがなかったのは残念至極。長旅ができない口実が腰痛ではなく、痔であったら、完璧に『どうでしょう』でした。その意味でも惜しい。アナ雪、闘痔の旅に出ることなく退場。

3.激走! 信濃湯治の旅

一方、闘痔ならぬ、湯治を強要されたのは小県に派遣された明智の使者。余計なことをピーチクパーチクと囀った所為で、昌幸に足止めを命じられてしまいます。残当。情報を制する者が主導権を握るのは何時如何なる時代、如何なる場所でも変わらない法則です。迂闊な使者は、

「おいおい、こら拉致だよ!」

と騒ぎ立てますが、同席しているお兄ちゃんはもっとひどい拉致を経験しているので助けてはくれません。それどころか『いきなり淡路島に飛ばされないだけマシ』と考えていそう。まぁ、ヘタに騒ぐと淡路島どころか、あの世に送られる可能性もあるでしょうけれども。
今回の信濃パートは『俺はもうどうしたらいいか判らない』と息子にブチ撒けたり、松の存在をコロッと忘れていた昌幸の可愛らしさが光りましたが、それと相対するお兄ちゃんの行動原理がイマイチ読めなかった。信長が死んでも一度臣従した以上、織田に従うのが筋目という主張は謹直なお兄ちゃんらしいとはいえ、説得力に乏しい。まぁ、現時点ではキャラクターの積みあげの最中なのかも知れません。親父の『わしは海を見たことがない』という嘘にも、今回は騙されなかったしね。
一方で凄くよかったと思えたのが越後パート。あの春日山城の映像は地元民マジ歓喜ですよ。これ、ちゃんと春日山城をイメージして作ったのか、ほかの映像の使い回しなのか判りませんけれども、かなり似ているよ。景勝とかねたんも久々に大河ドラマに登場。もう、これが二人の大河ドラマでいいんじゃないかな。

上杉景勝「今、信長が討たれ、織田は弱っている。そのようなときに戦を仕掛けるような真似はできん(キリッ
直江兼続「どうか、お察し下され」

という『天地人』の悪夢を思わせるアイトギガー発言も、織田との戦いでボロボロ&国内では新発田重家の叛乱で、とても防衛線を拡張する余裕がないがゆえの、外交上のポーズであることを昌幸に解説させることで、ちゃんと戦国ものとして成立させているのが嬉しいじゃないですか。


4.群盲撫象

さて、肝心の主人公パート。これはもう、完全に次回へのヒキで終わりましたね。いい悪いではなく、次回の展開で今回の内容の是非が決まるパートでした。松さんの身辺警護を頼まれたにも拘わらず、アッサリと安土城に連行されてしまう辺り、ブンビーさんは結構使えない男でした。信繁にこのダメ人間と罵倒されても文句がいえないレベル。次回での汚名返上を望みたいところですが、主人公と松さんははぐれてしまう模様。ここが男の見せ所やで。
尤も、完全に次回へのヒキに終わった内容かといえば、そうでもなく、今回の信繁が表していたのは、事件の中心に近づけば近づくほどに真相からは遠ざかるという人間社会の真理ではないかと。作中の実際のタイムスケジュールがどうなっているのか判然としないものの、信繁が安土から京に上り、更に途中で見かけた明智兵の動きを見て初めて、事態の全体像を掴んだのと対照的に、昌幸や上杉や徳川らは実際の本能寺を見たことがないにも拘わらず、自分たちの置かれた状況を把握している。情報とは目の前の一挙手一投足に惑わされるのではなく、相手の全体像が判るくらいの距離を置いて眺めたほうが、より多くの知識を手に入れることができるのだと思います。これは歴史を描くに際して、絶対に心掛けておきたい思考方法ですね。現時点での信繁は、まだまだ目の前の現実を吸収するので精一杯の模様。

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