『真田丸』第2回『決断』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

現在、地味にハマっているのがNG県で深夜に放送中の『水曜どうでしょうclassic』。別の映像媒体で何度も見たことがあるのですが、深夜番組は深夜帯に見るのが一番面白いということを再確認しております。どのくらいハマっているかというとサイコロ2以降を全話CMカットしてブルーレイに保存しているほど。こんな番組、何時見返すつもりだと自分で思わないでもありませんが、一昨年末、インフルエンザで自宅静養を余儀なくされた時には焼いておいた『JIN-仁-』をぶっ通しで鑑賞したので、これも何かの契機に役に立つ可能性がある……かも。
尤も、この番組は他人に薦めようにも何が面白いのかを理屈で説明することができないんですよね。取り立てて企画が斬新なワケでもないし、トークが際立って冴えているワケでもないし、大のオトナがウダウダウダウダと愚痴を垂れながら、乗りたくもない深夜バスに乗ったり、食いたくもない甘いものを食ったり、見たくもないオーロラを見に行ったりしているだけで、特に『核』になる事案が見当たらない。この番組の面白さを万人が納得する論旨で解説できる人は仏陀かキケロの生まれ変わりでしょう。まぁ、仏陀の生まれ変わりというのは原始仏教本来の教義では聊かありがたみに欠ける存在なのですが。
話を戻すと『面白い』とは理屈よりも感性に訴えかける要素なのでしょうね。題材のよさを伝えようとする時に『面白い』というフレーズでは意欲ばかりが空回りする。それゆえ、発信する側は企画が斬新である、脚本が練り込まれている、台詞がカッコイイ、演出の意図が深い、俳優の演技が巧い……のように面白さを支える要素を具体性のある言葉に変換して伝える必要がある。『面白い』に似た言葉に『美味しい』というフレーズがあります。他人に味を伝える時に『美味しい』の一言では発信者の気持ちは届かない。こってりとか、まったりとか、シャッキリポンとか、黄金色の味の小宇宙とか、ワザとらしいメロン味とか、様々な語彙を駆使してこそ、料理の内容が伝わる。『美味しい』というフレーズを連発するリポーターがグルメ番組で重用されないように、作中で『面白い』というフレーズを連発する物語は『ガリレオ』を除くとプロとして問題があると思います。大河ドラマも同じで『面白い』という台詞が軽々しく用いられるようでは危うい。実際に『ぼんくら官兵衛』では第一話の〆が『実に面白い』でした。
そんなことを考えながら鑑賞した『真田丸』第二話でしたが、後半で信繁の口から面白いって言葉が出ちゃったんだよなぁ。何気に黄色信号点灯。今回は過去の大河作品や歴史への拘りが垣間見られるシーンは多々あったものの、総体としてはマイナスの印象が濃かったです。大河ドラマの多くは第一話に力を入れるので、初回は普通に見られるケースが多いのですが、第二話で躓くと視聴意欲が減衰するんですよね。今回のポイントは4つ。


1.お兄ちゃん無双

真田信幸「躊躇うな! おまえのためではない、一族のためだ! そう思え!」

野伏の襲撃を撃退する主人公一行。信繁が姉を攫った野伏にトドメを刺すのを躊躇うシーンは偽善者かねたんの初陣を想起して、悪寒が走りましたが、直後の信幸の御説教でギリギリ帳消し。小山田の罠の時には信繁もバッサバッサと敵を斬り捨てていましたので、何とか汚名返上でした。この場面にかぎらず、最近の大河ドラマの悪癖と思えるシーンは随所にあっても、その都度、お兄ちゃんが色々とフォローして回っていました。それこそ、冒頭で触れた信繁の『面白い!』という台詞の前後には、お兄ちゃんによる甲信越のパワーバランス解説が入ったしね。作中でも作外(?)でもお兄ちゃんは便利キャラとして使われそうです。
一方で流石に薫はウザい。ああもテンプレの足手まといとして描かれると見ているほうも悪い意味でストレスです。これ、中盤以降に向けた何らかの伏線でないとしたら、真面目なシーンが書けないという三谷さんの悪癖が出たのでしょうか。中の人を考えると『これ以上は歩きたくない』とかダダを捏ねる母親に信幸が、

「そんなに乗り物が恋しけりゃ、深夜バスに放り込んでケツの肉が取れる夢を見せてやろうか!」

と怒鳴りつけてもおかしくないレベル。一昨々年の八重ちゃんはオンドゥル語ネタでしたが、今年の大河感想は『どうでしょう』ネタ推しでいくぞ!


2.親父無双

真田昌幸「迎えに参ったぞ!

上記小山田一行の計略から家族を救ったのは何と真田昌幸。いや、確かにカッコいいはカッコいいのですが、コイツはそういうキャラじゃないだろ。これは『平清盛』第一話のプルーン無双と同じでカッコいいシーンではなく、高度なギャグとして捉えるべきでしょう。まぁ、この先の昌幸のシーンは表裏比興と呼ばれる言動の機銃掃射しかないので、ここらでカッコいい場面を出しておかないとガチで視聴者からドンびきされるという意図が働いたのかも知れません。
後半で信幸、信繁と共に真田家の採るべき方途を探るシーンも悪くなかった。表裏比興としか表現できない言動の数々を誇る昌幸ですが、実際は一族の生き残りの方途を必死で考えた結果なんですよね……多分。くじを引けといっておきながら、いざ、引こうとするお兄ちゃんの選択を無言で制するシーンも昌幸の迷いを表しているのでしょう……多分。しかし、表裏比興を地で征く昌幸を見たかったのも事実。勝頼が真田ではなく、小山田を選んだ理由に『真田が北条と気脈を通じている』疑惑がありましたが、これは作中後半で本人も認める歴然たる事実なので、この件に関しては『露見たか』とペロリと舌を出す昌幸もいいんじゃないでしょうか。

尚、北条だけでなく、上杉とも気脈を通じていた模様。

ホンマ、昌幸の表裏比興っぷりは三千世界を駆け巡るでぇ。


3.勘助無情

徳川家康「武田が滅びたは目出度いことじゃが、ちっとも嬉しゅうないのは何故だ!」

それはひょっとしてギャグでいっているのか?(AA略

十年前の大河ドラマで四郎の母親相手に『ひぃ~めぇ~しゃ~まぁ~』と鼻の下を伸ばしていた男に何をいわせているのか。この台詞は完全なるアテガキ。間違いない。初っ端からネタ台詞で登場した本作のラスボス・徳川家康ですが……うーん、ビミョー。内野さんの家康は俳優の力量的にも年齢的にも期待値高かったのになぁ。いや、穴山梅雪の陰口&接待はいいんですよ。裏表があるのが戦国武将……というか人間の常ですので。でも、陰口からの接待ではなく、接待からの陰口のほうが大物感出る(正確には小物感が出なかった)のではないでしょうか。最初から裏を見せるのではなく、表を見せて次に裏を見せる。これこそが王道の順番ではないかと。
尤も、歴史に対するズレた愛情などはそこかしこから伝わってきたのも確かで、

石川数正「徳川家中は一心同体、心配御無用にございます!」

それはひょっとしてギャグでいっているのか?(AA略

とツッコんだ視聴者も多かった筈。
そして、初回で全国の視聴者のハートを鷲掴みにした四郎勝頼が二話で退場。信長だと視聴者による助命嘆願の手紙で本能寺の変が伸びるという話が何度かありましたが、今回の勝頼も手紙が届くまで出演していたら、天目山の戦いが順延された可能性あったかも。今は亡き林邦史朗さん演じる信玄公の幻影を死の間際まで見ていたことからも判るように、最後まで父の呪縛から逃れられなかった息子という描写でした。実際、武田の版図を一番拡大させたのは勝頼なんだよなぁ。作中で家康と正信が『勝頼は強かった』と評していたのも、その辺の史実を踏まえてのものでしょう。しかし、信玄の中の人が本当に彼岸の住人になってしまわれるとは……慎んで哀悼の意を表します。


4.本格大河とは何ぞや?

さて、今回のダメ出しタイム。一言でいうと緊張感の欠如に尽きます。冒頭の逃避行が典型でしょうか。あれ、ガチで野伏の襲撃に脅えていたら、あんな御気楽な道中にはならないよね。少なくとも、顔に泥を塗るのは嫌だとかいう寝言をいってられません。というか、ハナから小奇麗なオベベを脱いで、百姓に身を窶した一行を描いてこそ、彼らが如何に危険な状況か一発で視聴者に伝わるんですよ。中盤の小山田一族の謀略も、事前に温水が真田の人質の行方について尋ねるシーンがあった所為で、視聴者には簡単に『コイツら敵だろ』と判っちゃった分、彼らが寝返るまでの過程に緊張感を欠きました。そして、終盤の真田親子会議の議決。上杉でも北条でもなく、織田に属するという決断が如何に突拍子もないものかという押しが弱かった。ここまでで主人公に迫った危機は身内の裏切りがメインで、織田軍の直接的な脅威に晒されていないので、死中に活を求める昌幸の決断の重さが伝わらないんですね。面白くはあるんですよ。でも、そこに一族の命運を賭けるという必死さが見えてこない。
初回の感想記事に『本格大河の雰囲気とは何か』というコメントを賜りまして、私は登場人物の一言半句一挙手一投足にガチで生命が掛かっていることを視聴者に伝える技術ではないかとお答えしました。『独眼竜政宗』の小田原参陣が典型ですね。あれ、何か一つしくじったら政宗の生命はなかったであろうことは、現代人の我々にもヒシヒシと感じられました。勿論、危機感が本格大河の条件という理論は私の主観に過ぎないのですが、そういう作品に大河ドラマの臭いを嗅いでしまうのも事実。『ゲーム・オブ・スローンズ』とかね。今回の小山田一族の計略も『GOT』では、もっとスリリングに描かれると思うんですよね。彼らが敵だと気づくまでの過程の練り込みとか拘ってくるであろうことは『キャスタミアの雨』を見た人間であれば、誰でも思いは同じでしょう。
尤も温水の末路の描かれ方を見ると、こちらは結構な緊張感があったんだよなぁ。見捨てた主君の首級を目の前に置かれるとか、この場面での温水の心境を慮る道義上の負い目と自分も同じように首級を刎ねられるという恐怖の板挟みでしょうしね。この場面は凄くよかったので、もしかすると、本作の製作者は『そういうことはやろうと思えばできるけれども、今回はあんまりやらないよ』というスタンスなのではないかと。その意味でも、今年の大河ドラマはクオリティの善し悪しは別として、本格大河にはならないという事前の予想が当たっていると思います。これに関しては当たっても嬉しくないですけれどもね。


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