時には成り損ねた教師のように | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

新しい門出を迎えて、心機一転という学生さんも多いと思われますので、今回は新年度らしい話をしてみましょう。
心機一転といえば、先日、長年愛用していたスマホを買い換えました。新機種は、もこっちの表現を剽窃するとデが頼むハンバーグ並みのビッグサイズ。加齢に伴う視力の低下で、なるべく画面の大きいものをチョイスした結果、ズボンのポケットに入れるとシートベルトを締めるのに難儀をするサイズになってしまいました。気軽に持ち運べないデメリットは意外に大きいですが、しかし、携帯しないワケにもいきません。人間の暮らしを便利にするために開発された携帯端末は、それを所持しない人間が不便を味わうという皮肉が成立するレベルにまで、世の中の仕組みに食い込んでいます。

「自分の生活情報を電子端末に委託している段階で、全ての人間はサイボーグである」

という泉宮寺豊久の至言を思い出しますな。携帯端末は既に人間の血肉になりつつあります。それがいいとか悪いとか論ずるつもりはありません。現在の社会はそういうものだという認識の話をしています。現状を認識すること、肯定すること、改革すること、悪用することはそれぞれ別のものである筈です。その視点からすると、

「『スマホやめるか、大学やめるか』 信州大入学式で学長」

という発言は全く現実を認識できていないように思えます。既に社会の一部として機能している存在を今更否定して何になるでしょうか。況してや、学生の就活にスマホは大きなウェイトを占めるツールであることを思えば、上記の発言は発言者の現状認識能力の欠落を曝け出しているようですらあります。

でも、実は違うんですね。

こちらのリンクが学長の挨拶の全文です。これを読むと判るように、学長さんは『我が大学は学生がのびのびと学べる環境にあるから、情報の収集に齷齪するよりも、じっくりと考える力を養いましょう』と述べているに過ぎない。発言そのものは些かありふれた内容ですが、決して『スマホ辞めない奴は信大辞めろ』と放言しているワケではありません。しかし、先述の記事のタイトルだけを見ると、そう思えてしまう。実際、ネットでは学長の発言を否定する意見が見られました。センセーショナルな見出しのほうが注目されるというマスコミの都合で切り貼りされた発言が、勝手に独り歩きする典型ですね。尤も、学長の挨拶の全文は、それこそスマホを使えば簡単に検索できるワケで、この学長さんの名誉はスマホが救っているといえなくもありません。皮肉な話です。

報道と教育絡みの話題でいうと、こういう話もありますな。

「検定発表 教科書はだれのものか」

うん、もうね、アホかと。いや、私も教科書検定に国が介入する割合は少ないに越したことはないと考えますし、実際の外交交渉で原則論に固執するのはどうかと思いますよ。でも、教育とは何よりも事実や真実の追求が貴ばれなければいけないジャンルじゃないですか。まずは真実を知る。次いで、真実と現実の齟齬に気づく。そこで生まれた疑問と如何に対するかを模索する。それが学問の王道である筈です。学問の基礎知識を叩き込むよりも先に外交上の配慮を教えてどうするんでしょうか。そもそも、基礎を知らない人間が応用を使いこなせるとも思えません。妥協点を探るにせよ、原則論を貫くにせよ、まずは事実を踏まえていなければ話にならないワケで、この点では今回の教科書検定には大いに賛意を示すものです。
尤も、政府による教科書検定を将来的にも全面的に肯定できるかというとそんなことは全くないのも事実です。昨今、ネット上では、

インパール作戦はマトモな計画であった

という駄法螺が物議を醸しておりまして……個人レベルの解釈としては、どうぞ御自由にといえますが、そういう理論を肯定的に紹介する組織の親団体に現役バリバリの政治家が幾人も名を連ねているというのは、ラッスンゴレライとかいうネタよりも遥かに笑えない話。あれ、どう解釈したらマトモといえるねん? 上記のスマホや教科書検定の記事を書いた新聞社と同レベルの捏造、偏向、曲学阿世。何よりも事実と真実を優先するという基本理念からすれば、そういう政治家が教育に携わるのは御遠慮頂きたい。

近年、教育界では自国を愛する素晴らしさや他人を信じる尊さが叫ばれています。しかし、報道や政治家が常に正しいことを主張しているとはかぎらないのは上記の通り。雑多な発言が氾濫するネット社会の教育で何よりも優先されるべきは、

情報を疑うことの大切さ

ではないでしょうか。飛び込んでくる情報を迂闊に信じない。真に受けない。吹聴しない。情報のソースを必ず確認する。そのために情報端末を上手に使う。道徳上の善悪は別として、それが現代の教育に最も必要なことではないかと思います。勿論、この記事にも私が気づいていない鵜呑みや偏向があるかも知れません。この記事を読んで、リンク先や他の報道と比較して、

「あー、与力の奴、こんな基本的な間違いを犯してやがる。馬鹿だなー、ハハハ」

という自分なりの解釈を見出して下さいましたら、それこそが望外の喜びです。
以上、嘗て教職を志した私から、新年度、新学年を迎えた学生さん(がお読みになっていた場合)に向けての言葉です。御静聴ありがとうございました。



掲載した時点では『インパール作戦は成功した』との文章でしたが、当該記事に再度目を通した結果、『インパール作戦はマトモな計画であった』という表現のほうが妥当と判断したため、記事の一部を訂正致しました。当方の不手際をお詫び致します。


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