『独眼竜政宗』第29回『左遷』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

今夜は久しぶりに母親と一緒に食事をしながら本作を観賞。思えば『花の生涯』から殆ど全ての作品を見てきた母親がイチオシと断言したのが本作でした。二人で本編を楽しみながら、往年の大河について色々語った四十五分。『本作の淀殿が歴代の大河で一番』という母親に『いやいや、女太閤記の池上季実子さんが至高でしょう』と返したりと楽しい時間を過ごせました。ちなみに今年の大河に関しては、

与力母「今年の淀殿が一番似あわない」
与力「いや、今年は誰彼とかじゃなくて、全般的にミスキャストだろ。信長とか」


といったら、

与力母「信長役は誰だっけ?」(原文ママ

という返答が返ってきました。まぁ、確かに何をやったのか全く記憶に残らない信長ではありましたが……年齢的なアレではないと思いたいです。今回のポイントは5つ。

1.滑舌

小梁川泥蟠斎「めご殿が御懐妊なされた」

何度繰り返し聞いてもめご殿と言っている。多分、この爺さんは確信犯。主君をからかって遊んでいやがるな。万死に値する。ここから始まる『めご』か『ねこ』かの遣り取りは実に微笑ましいですな。勿論、当人たちは真剣そのものなんですが、必死であればあるほどに笑えるのがコメディの神髄。他のメンツは兎も角、一番冷静であるべき軍師までが、

片倉小十郎「しかとお考えのうえ、お答えなされませ。御子を御生みあそばされるのは、御正室でござるか、それとも、側室でござるか?」

とかいっちゃうしさ。泥蟠斎が幾ら考えても、どちらが子供を生むかという事実は変わらんでしょうが。まぁ、判りやすいように正室か側室かで答えろということなんでしょうが、何か笑える小十郎の言葉でした。当然、直後の男か女かの問答も。こういう場面を見ると、大河の脚本家もちゃんとコメディを描ける人じゃないと務まらないとシミジミ思います。笑いって一番難しいことですからねぇ。また、この場面がホノボノチックな笑いに満たされたのは、直前の場面の山家国頼の討死があればこそ。緊張と緩和ですね。或いは一つの生命が去って、新たな生命がやってくるということもあるでしょう。
尚、今回のラストで飯坂局の出産は鶴松逝去を憚り、一門衆の地元で行われたとのこと。この辺もリアルさですよね。でも、飯坂局も旦那がマー君で幸せですよ。これが小十郎だと『関白の面目を考えて、生まれてきた子供が男子の場合は始末せよ』とかいいそうですし。本当によくよく考えると、本作の小十郎って常識人の皮を被っているが、誰よりもイッちゃっている存在なのかも知れません。

2.勝新

逆に今回、子供の件で絶望のズンドコに突き落とされたのが勝新秀吉。鶴松逝去の場面とか、後半、寧々に慰められる場面とか、凄かったな。BGMがまったくかからないんだぜ。こんなの役者さんを完全に信用していないと怖くてできないですよ。いや、現場で勝新に『貴方の演技信用できないんでBGMいれます』なんていうほうが怖くてできませんが。これに関しては実際に本編を見て頂くしかありません。それも、今回のみの視聴ではなく、第1話から全て見てきたほうがいい。秀吉のみならず、今までのヤンチャ放題の政宗を見ればこそ、その政宗が心底怖れる秀吉の最も弱い面が剥き出しになった今回が光ります。勝新秀吉は確かに怖い。でも、怖さのみではない、他の要素も演じられてこその怖さというのが判りました。唐入りの動機も鶴松逝去の憂さ晴らしというとんでもない展開でしたが、寧ろ、勝新秀吉ならあり得るレベル。関羽を討たれた劉備が孫呉に攻め入った時も、こんな感じだったんじゃないかなぁ。

3.ボッシュートです!

先週、GALARYさんに頂いたコメントに乗っかるとすれば、

「残念ながら、伊達政宗さん、米沢城をボッシュートです!」チャラッチャラッチャーン

という草野仁さんの声が聞こえてきそう。しかも、今回はスーパーひとし君を失ったレベルの衝撃でしょう。2問目くらいでね。もう、逆転トップは不可能っぽい。大崎・葛西の新領と引き換えに伊達・米沢を召しあげられてしまいました。しかし、物語上、主人公が災難に見舞われるイベントにも拘わらず、見ていた私も母親もニヤニヤしっぱなし。勿論、ほーら、いわんこっちゃないという苦笑です。全く以て全部主人公の所為。自業自得。因果応報。でも、そうであるからこそ、面白いんですよね。何もしていない自称軍師が『サスガカンベージャ』なんてもてはやされる作品の何が面白いんだよ。


4.騙されてません

上記の人事が家康の差配と聞いて、猛抗議する主人公……ですが、ここもハナから本題に入ることはしませんね。必ず、ワンクッション置く。今回は世評の家康の高さを語ったうえで『そんな御立派な方が俺の領土を削るワケねーよな?』と遠回しの嫌味にする。これが人物の深みと成長を醸し出すんですよ。

古田織部「今少し、歯に衣を着せなされ。ゆとりが生じ申す。それが貫録を生み、人望をもたらすのでござる」

全く、左介のいう通り。100%の本音を口にして許されるのは子供くらいです。大人は思ったことを全て口にしない。当たり前のことなんですが、近年の大河では見過ごされがち。
しかし、そういう物言いをさせれば、家康のほうが一枚も二枚も上手。この場面の家康の言い分も、一件筋は通っているようでいて、その実は、

「伊達殿、ものは考えようだ」

というレベルを越えていないんです。でも、社会ってそういうもんだよね。誰かの言葉でパァーッと視点が変わるなんてことは滅多にない。他人を騙す以上に自分を騙さないと渡っていけないのが人生。自分自身をうまく騙せるようになった時、人は大人になるんです。家康の言葉は親切な助言というよりも、

徳川家康「俺だって似たような目に遭っているんだ。蒲生も同じだ。それくらいでガタガタいうくらいであれば、大名稼業は向いていない。クして寝ろ」

と発奮を促しているようにも聞こえました。これで変わるか変わらないかは本人次第。政宗もそこまでいわれれば納得せざるを得ない。『見せてやるぜ、独眼竜の天城越えを!』となる。某官兵衛のように上役にいいように騙されたワケではないと思います。それでいて、新しい拠点にと推薦した城の縄張りをしておいてやるとか、サラリと恩を売るのも忘れない。本編で政宗が『次は秀次の時代だ!』と先を読んだ気になっていましたが、実は家康は更に先を読んでいた=豊臣家の要人よりも諸大名に目をかけているのでしょう。

5.今週のモガミン

ああ、遂に駒姫イベントが始まってしまったか……。これ、何だかんだでエンタメ主体の本作では救いようのないエピソードなんですよね。本当に大名家稼業というのは厳しい。本来はめでたいものであるべき縁談も、一つ打つ手を誤っただけで悲劇を招きかねない。今、夢中で見ている『ゲーム・オブ・スローンズ』でも、或る人物の恋愛がとんでもない惨劇に繋がってしまっていて、見ていて本当にシンドかった。
しかも、本作では主体的に秀次に肩入れしようとした政宗と違って、モガミンは息女を求められてのやむを得ない仕儀という描かれ方です。主人公よりも主人公の不倶戴天の仇のほうが視聴者の同情を買う構図。この辺は脚本家の余裕すら感じさせますな。主人公を描くのでイッパイイッパイではない。寧ろ、脇を固める存在を描いてこそ、物語に彩りが出る。彩りという点では、この場面ではモガミンは元より、浅野長政の存在が顕著。若い上司のムチャ振りに苦慮するベテランとの間に入って、適当な落としどころを見つけ出す。これが大人の仕事というものです。大人が大人の役割をするのが『独眼竜政宗』の魅力の一つ。

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