松本清張氏を占星術的に読み解く |  ZEPHYR

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あらゆる逆境をはね返したと思われる作家がいる。

昭和の日本を代表する「作家」は? と問われたら、数名の名が挙がると思います。しかし、「推理作家」は? という問いかけを行ったなら、かなり絞り込まれるでしょう。
そして五指、いや三指に絞れといわれても、リストから外されないだろうと思われる書き手はいます。

とくに二人挙げるとすれば、江戸川乱歩と松本清張。
このお二人は絶対に外せないと思います。
リストの数を3、ないし5にした場合、他に誰を加えるか、様々な議論が生じてくるでしょう。
が、日本の推理小説(≒探偵小説)の礎を築き、発展に導いた大乱歩と、日本の高度成長期以降、推理小説を低劣な娯楽読み物(世間の認識の中で)ではなく、文学の一つの形態にまで押し上げた清張の業績に異を唱える人は限りなく少ないと思います。

今日は、故・松本清張氏のホロスコープを解読してみようかと思います。
1909年12月21日、北九州に生まれた清張氏。
私が調べた清張氏の出生時間が正しいのかどうか、はっきりとした裏付けは取れていませんが、現実に照らしたとき、矛盾がないようなので、13時出生という情報を信じることにして、以下の解読を行います。

松本清張氏が「グランド・クロス」という希な複合アスペクト(座相)を持っていたことは、占星術師の間では比較的よく知られています。
グランド・クロスというのは、地球を中心に、十字型に星が配置される座相のことで、かなり強烈な過酷な運命を与えると言われています。

 ←こんな感じ。

十字の中心に地球があると思って下さい。
四角形の四隅に太陽や月を含む天体、上昇線(ASC)や南中点(MC)などの感受点のいくつかが配置されているとお考え下さい。
地球を中心にして、それらの星々は、それぞれに隣り合わせ同士が90度、対向するもの同士が180度の位置関係になり、まるで正方形のがっしりとした家の図面みたいになります。
90度も180度も、一般的には凶角座相と言われます。
つまりグランド・クロスは星々が凶角のみで関係を結び、あたかも固定されたかのような「大凶」座相なのです。

もっともアスペクトを吉凶で分別する考え方は、もはや現代的ではないと言われます。最近ではイージーアスペクト、ハードアスペクトなどと呼ぶことの方が多いようです。
イージーは調和的でゆるやか、一般的に良いと感じられる出来事として現れ、ハードは不調和で厳しい関係や出来事として現れますが、ハードの方がエネルギーが高いと見ます。
イージーはたしかに座相としては楽ですが、現状を改変するほどの強烈な力はありません。
世の中には時折、革命的な出来事が起きますが、これらはほぼ例外なくハードアスペクトで発生します。
そしてそれなくして、その後の世界もないわけです。

として見るなら、松本清張氏のホロスコープには、まさに文壇に大異変を引き起こすだけの力が備わっていたことになります。
特筆すべきは、清張氏の場合、このグランド・クロスが活動宮である、牡羊座、蟹和、天秤座、山羊座で形成され、同時にそれらの星々は、社会活動、本人が努力で到達できる限界点を示す天の頂上(MC)と地の底のIC、東西の地平線という、きわめて重要なポイント軸に重なっているということです。

こうして見ていくと、清張氏のホロスコープには一種のすごみさえ漂っていることが分かります。
MCにはぴたりと文筆家としての水星が重なり、小説家としての活躍が約束されているかのようです。

しかし、そうなのでしょうか?
結果から読み解いていくと、これらの判定は合理的に思えます。
ですが、このホロスコープの配置のヘビーさは、普通ではありません。
ASCには月、火星、土星が重なり、おそらくご本人はかなり鬱屈した憤りを溜めやすく、また火山のようにそれを噴火させてぶちまけることも多かったのではないでしょうか。
4室の海王星は、家庭運の危うさを示しています。家族の不幸、離散など。
6室の木星は、頑強な身体を与えますが、グランド・クロスに関与する星ですので、最終的にはこれが命取りになる可能性(木星=肝臓)を示しています。
また6室は労働環境も示すので、安定した職場にも恵まれにくかったはずです。
10室の天王星は、まさに革命の星で、氏の文筆家としての革命的な活動を示す一方で、社会的な地位や職を失う、また幾度も変わらざるを得ない状況を示しています。

氏の生涯については、wikipediaをご覧下さい。
そして私が行った解読と照らし合わせてみて下さい。
ざっと見ただけでも、氏の命運が如実に出生ホロスコープに現れていることがおわかり頂けるでしょう。

しかし、やはりこれはあくまでも逆算的解読です。
もし、私がまっさらの状態でこの人のホロスコープを解読したなら、「うーん」と唸らざるを得なくなるでしょう。
もしかすると大物になるかも知れない。
しかし、それには大変な努力を要するのです。
運命の激動に耐えうる精神力、意志と良き選択が必要になってきます。

もしそれができなかったとき、この人の命運は「憤りやすい性格が激発的な行動を引き起こし、そのために職も家庭も安定せず、幾度も失職や転職を繰り返し、何も成果を得られぬまま終える人生」になってしまう可能性もあるのです。
小説家としての活躍が約束されていた?
いや、とんでもない。

人間は自らの命運を、ある程度選択して生まれてくることが、近年の生まれ変わりの研究で分かってきています。
おそらく清張氏は、このような激動の運気の中に身を投じ、大変な冒険をなさったのだと思います。
とはいえ、これは大変な勇気です。
もしSF的にパラレルワールドというものがあるのなら、松本清張氏が大作家ではなく、大犯罪者になっている世界も存在するかも知れません。

でも、氏には「小説」があった。
それを書くことで、自らを救い、導いた。
それを忘れないでいた。
この世に生まれ出でたときに携えていたペンを。
これこそが、氏の「良き選択」だったのだと言えます。

そしてもう一つ。
ハードアスペクトばかりの氏のホロスコープの中で、唯一と言っていいでしょう。
きらりと輝くイージーアスペクトで囲まれた星があります。

金星です。
男にとっては恋人の星でもありますが、清張氏にとってこの金星は「妻」の星でもあります。
もしかすると、とても良い奥さんをめとられた。
それが氏の救いであった、癒しであったのではないかと、推察します。

日本推理小説氏にそびえる巨樹、松本清張。
その偉業に限りない敬意を表し、氏の冒険の人生にもまた畏敬を覚えずにはおれません。