怪奇小説傑作集3(創元推理文庫) | 夜の旅と朝の夢

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怪奇小説傑作集 3 【新版】 (創元推理文庫)/ラヴクラフト

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怪奇小説傑作集の3巻目にして、英米篇の最終巻です。全部で10篇の短編小説が収録されています。2巻目に比べると収録作品は少ないですが、傑作揃いなのは変わりません。

本巻は、ホーソーン、ディケンズ、キップリングといった文豪、コリンズやラグクラフトといった怪奇小説の雄など、著名な作者の作品が楽しめるのが特徴でしょうか。

先ずは、ホーソーンの毒草奇譚「ラパチーニの娘」から始まります。つかみはOK、本書が期待を裏切らないことを証明してくれます。続いてディケンズの「信号手」。今となっては目新しさのない単純な幽霊譚ともとれますが、流石は文豪、読ませます。

その後、あまり知られていない二人の作品(幽霊ものと透明人間もの)が続きますが、これがかなり面白く、世の中は広いなと改めて思います。その次は、キップリングの「イムレイの帰還」。怪奇小説的な色合いも少し薄いし、個人的にはやや期待外れかも。

次のコッパードの「アダムとイブ」は、怪奇とは違う気もしますが、優しげな良い作品だと思います。そして、コリンズの「夢の中の女」という佳作を挟んで、ラグクラフトの「ダンウィッチの怪」。

ラグクラフトは、クトゥルフ神話やコズミック・ホラーを生み出した怪奇小説界の風雲児なわけですが、個人的にはちょっと苦手な作家。もちろん、彼の独創性は認めていますし、作品がつまらないわけじゃないんですが、大袈裟過ぎる気がして、ついていけず、読んでいてやや冷めてしまうところがあります。「ダンウィッチの怪」もそのイメージを払拭させてはくれませんでしたが、ただ面白いのは確か。

そして、「悪魔の辞典」でお馴染みのビアス(本書では、ビアース)の「怪物」、デ・ラ・メアの「ソートンのおばさん」という一風変わった2作品で幕を閉じます。

怪奇小説傑作集1、2を読んで面白いと思った人を裏切らない、これまた良いアンソロジーです。