上橋菜穂子「獣の奏者外伝 刹那」です。
本編は本編でしっかり完結していた物語ですので、
本書が蛇足であるという捉え方もあるかと思いますが
個人的には充分アリかなと思います。
若干ながら、王獣・闘蛇といった「獣の奏者」を彩る存在が
本書ではまったく活躍しないことに不満もありますが、
むしろ外伝が本編とは違う目的で描かれているものと理解しました。
収められるのは、主人公・エリンとイアルの恋物語を描いた「刹那」、
エリンの師・エサルの若かりしころを語る「秘め事」、
エリン、イアル、ジェシ一家の一風景を切り取る「初めての……」。
前2編は中編、最後はショートショートとなっております。
このなかでは「刹那」がいいですね。
ファンタジーに仮託して、現実にもあるお産のリスクとか
父親と母親の温度差とかを、現代物で描こうとすれば
複雑にならざるをえないところ、シンプルに教えてくれます。
決して傑作とか名作という部類の作品ではありませんが、
ファンにはうれしい一冊かと思われます。
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