「財源不足」記事に潜む、中央省庁のウソ | 山本洋一ブログ とことん正論

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元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 民主党の新執行部が固まり、29日からは臨時国会が始まります。臨時国会ではカジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)法案」の審議が注目ですが、それよりも国民生活への影響が大きいのは消費税率の再引き上げ問題です。首相が判断する年末に向け、駆け引きが激しくなりそうです。


 民主党は16日、代表代行に岡田克也元外相、幹事長に枝野幸男元官房長官、政調会長に福山哲郎元官房副長官、国対委員長に川端達夫元総務相を充てる人事を決めました。各新聞の事前報道では大塚耕平政調会長とされていましたが、またもや誤りだったようです。


 海江田代表と距離を置いてきた岡田氏らの取り込みで挙党一致体制を構築する狙いとみられますが、安倍政権の高支持率が続く中でどこまで存在感を発揮できるかは不透明。逆に今回の人事で外れた格好の前原誠司元外相や細野豪志元幹事長らの動向に注目が集まりそうです。


 臨時国会の焦点はIR法案や地域創生関連法案などの審議ですが、いずれも与野党が対決する課題ではありません。それよりも来年10月に消費税率を10%に引き上げるかどうか、この判断こそ重要です。判断時期に向けて、さっそくこんな記事が流れているのをネット上で見つけました。

以下、引用


共同通信 915日配信


子育て支援3千億円不足 消費税据え置きで厚労省試算

 消費税率を8%に据え置いた場合、政府が消費税増税によって確保するとしている子育て支援の財源7千億円に対し、3千億円程度の不足が2015年度に生じることが厚生労働省の試算で14日、判明した。税率の5%から8%への引き上げによる増収分からは、医療や介護の充実にも充当しなければならず、子育てには4千億円強しか回せないためだ。


 安倍晋三首相は年内に15年10月から税率を10%に引き上げるかどうかを判断する。据え置きとすれば、子育て施策は大幅に圧縮せざるを得なくなり、政権が最優先課題に掲げる女性の活躍推進や人口減少対策が足踏みする可能性がある。


※47NEWSより

 要は消費税率を8%に据え置いたままだと子育て支援の予算を確保できない可能性がありますよ、それは国民のためにも良くないから10%に上げましょうね、という厚生労働省の言い分を載せた記事です。「据え置きとすれば子育て施策は大幅に圧縮せざるを得なくなる」と脅し文句まで書かれていますが、本当なのでしょうか。


 民主党政権が自民、公明両党の協力を得て決めた「社会保障・税の一体改革」は、税率の10%引き上げで生まれた2・8兆円について、子育てに0・7兆円、医療・介護に1・5兆円、年金に0・6兆円充てると定めています。確かに8%に据え置けば子育てに0・7兆円を追加投入することはできません。


 しかし、それはあくまでも消費税の引き上げによって生まれた財源に限った話です。本当に子育て予算を拡充する必要があるのであれば、他の予算を削ればいいだけの話で、消費税増税は必須ではありません。そんな簡単なことを理解せず、厚労省の言い分をそのまま書いてしまう共同通信の記者のレベルの低さに呆れます。


 国の財布を握る財務省を筆頭に、中央省庁はとにかく増税したいのです。増税すれば自分たちの担当する分野にたくさん予算をつけることができるし、予算が増えれば権限も増します。天下りや政財癒着を抜きにしても、増税した方が仕事がしやすくなるのです。


 このように「増税しないと○○ができなくなる」といった形の脅し記事がこれから増えるでしょう。だまされてはいけません。このまま政府の膨張、役人天国の拡大を許してはなりません。