スペイン語+英語:Vamos a hablar/Let’s talk-二刀流開眼

浅草名画座で「宮本武蔵 二刀流開眼」と「人生劇場 飛車角と吉良常」の二本を見ました。

劇場のスクリーンが小さいのでいちばん前の真ん中で見ました。スクリーンに小さな穴が無数にあいているのがわかります。

中村錦之助主演の「二刀流開眼」はやはり前作の「般若坂の決斗」と二つで一つの映画でした。

「二刀流開眼」の後半は佐々木小次郎と吉岡清十郎の物語でした。(タイトル・ロールの最後は両者を演じた高倉健と江原信二郎の二枚タイトル) 江原は自分の任には重い名門の二代目を背負う清十郎を演じ、その重荷と戦う姿と生への執着に哀愁が漂い見事でした。(武蔵と小次郎には及ばないまでも門弟たちよりは強そうです)

高倉健演ずるプライドも力量も高い佐々木小次郎は、最終作「巌流島の決斗」の小次郎より私は好きです。「巌流島の決斗」の健さんの小次郎はあまりに類型的だったと思います。「二刀流開眼」の小次郎には武蔵とは考え方・生き方は異なるが、同じように未来への高い志(こころざ)しが感じられました。
#これぞ好敵手です。

そしてやはり、薄田研二の柳生石舟斎は見事。そこに在(あ)るだけで石舟斎でした。

片岡千恵蔵と市川右太衛門の両御大も出演したオールスター映画「水戸黄門」で薄田は悪家老を演じましたが、あの映画でいちばん輝いていたのは主役の水戸光圀を演じた月形龍之介でも、知恵蔵(将軍綱吉)と右太衛門(剣豪)の両御大でもなく薄田だったと思います。それと同様の存在感をしっかり感じました。

入江若葉演じるお通さんは出番も多く育ちのよい雰囲気がよくでていました。また、錦之助の武蔵も後半は出番が少ないものの柳生の荘での前半は好きです。(第二作のラストの意味もいかされています) 三国連太郎の沢庵和尚の出番はありません。

浅草名画座で見た「般若坂の決斗」+「二刀流開眼」は、三国演ずる沢庵和尚の存在感がきわだっていた第一作には及ばぬものの満足のゆく出来です。
#今月10日(金曜日)に新文芸坐で見る予定の第四作の「宮本武蔵 一乗寺の決斗」が今から楽しみです。


さて、
併映作の「人生劇場 飛車角と吉良常」はキネマ旬報のベストテンに入るなど悪い作品ではないけれど、5年前の東映任侠映画の走りとなったリメイク元の正編「人生劇場 飛車角」よりかなり魅力の落ちる映画です。

まず、シンプルだった旧作を込み入った物語にしてしまったのが間違い。(旧作が折角任侠映画として原作の文学の匂いをできるだけのぞいたのに) 飛車角を演じた鶴田浩二も、同じく宮川を演じた高倉健も、5年前の若い飛車角・若い宮川のほうが一本気なだけに魅力があった。原作の主役・青成飄吉も、梅宮辰夫@旧作>>>松方弘樹@新作、だった。

藤純子の演じたおとよも、リメイク版の脚本が旧作の魅力の一つだった微妙な三角関係の成り行きをみずからぶち壊しているので、あれでは旧作の佐久間良子のおとよには、どう演じてもかなわない。

それにしても、旧作で裏切り者の奈良平を演じた水島道太郎はよかったなあ。あの作品の要(かなめ)でした。なにせ健さんの宮川をぶち殺し、鶴田・飛車角を殺すのだから・・・。(ラストは「明日に向かって撃て」と同様に飛車角が殺される場面はないが) その要の奈良平が新作では・・・。(>_<)

辰巳柳太郎が演じた吉良常も芸達者だけに魅力のある吉良常だったけれど、存在そのものが吉良常だった旧作の月形龍之介にはかなわない。
#特に、鶴田・飛車角と月形・吉良常の出逢いは、喧嘩(でいり)の直後だけに旧作のほうが遥かに上。(旧作は脚本が素晴らしい)