米政府は26日、メキシコや米国で発生した豚インフルエンザの人への大量感染を受け、公衆衛生に関する緊急事態を宣言、被害の拡大防止に向け、本格的な対策に乗り出した。ナポリターノ国土安全保障長官が同日の緊急記者会見で明らかにした。ロイター通信によると、カナダでも計6人の感染が確認された。感染確認はメキシコ、米国に次ぎ3カ国目。

 ロイターによるとメキシコ政府は26日、同国で感染が確認されるか、疑われる死者は計103人になったと発表した。

 日本政府は27日の全閣僚による対策会議で、ワクチン製造の早急な検討などの措置を講じることを決めた。

 米疾病対策センター(CDC)によると、米国での感染者は新たに判明した中西部オハイオ州の1人を合わせ計5州で20人。検査中のケースも加えるとさらに増える可能性があり、CDC高官は「複数の死者が出ることを懸念している」と述べた。

 緊急事態宣言は感染が広がった場合に備え、連邦政府や州当局に検査や薬品調達の特別な権限を付与。オバマ政権として危機管理に万全の姿勢を示す狙いもあるとみられる。

 ギブズ大統領報道官は26日のNBCテレビで「政府は適切な対策をとっており、パニックに陥るような事態ではない」と、冷静な対応を呼び掛けた。ナポリターノ長官は会見で、治療薬タミフルなどの備蓄のうち約1200万人分を放出する用意があると表明した。

 CDCによると、米国の感染者はオハイオ州のほか、ニューヨーク8人、カリフォルニア7人、カンザス2人、テキサス2人と、東岸から西岸まで全米各州に広がっている。うち入院は2人で、ほとんどは軽い症状。AP通信によると、ニューヨークで確認されたウイルスはメキシコで広まっているものと同系統。

 APによると、カナダの感染者の内訳は西部ブリティッシュコロンビア州で2人、東部ノバスコシア州4人。

 米当局は関係州に休校措置の検討を求めるとともに、メキシコへの渡航自粛を要請。感染例の出た国からの入国者に体調を尋ねるなど水際対策を強化した。