お待たせしました。マリモ 様
頂いたリクエストは、
『蓮様の気持ちに気付いたキョーコちゃんが告白されるのを待ちきれず、自分から行動に出る』
と言う事でしたが、ご期待に添えているでしょうか?(^^;;
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「私からで良いですか?」 1話
ある日、撮影所の階段でいつものように一人の時間を過ごしていた蓮の言葉が、そっと近付こうとしたキョーコに聞こえてきた。
「最上さん…好きだ。付き合って下さい。はぁ~~。……ストレートに言ったら、受け止めてくれるのかな?」
蓮の言葉に我が耳を疑い、キョーコはそっと階段から遠ざかった。
独り言? 嘘? 冗談?
キョーコの中に、蓮の言葉が本物だったのか、疑いながらも嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
それはキョーコも同じ気持ちを持っていたからだ。
だからといって言葉にして告げるには、ただの先輩にしてはとても大きく人気もあり、自分如き後輩が隣に立てる人ではないと思っていた。
それに蓮には愛おしげに名前を呼ぶ、『キョーコちゃん』という人がいるはずなのに…。
そして普段の蓮はいつもと同じ優しい先輩の行動範囲を出ることのない敦賀蓮のままだ。
「坊」の時に聞いたことのある、そして自分にだけ見せる敦賀蓮とは思えない顔もある。自信に満ちた敦賀蓮だけが彼ではないと、キョーコは蓮にも自信のない弱い面があるのだとと気づいた。
さっきの蓮の口調も、目の前にキョーコが居る訳でもない告白なのに、何処か自信のない言葉だった。
「それなら…私から行動しても良いですか?」
キョーコは目の前にいる蓮に宣戦布告するように、一人呟いた。
*****
「敦賀さん。お仕事お疲れさまです」
「やあ、最上さん。今日はどうしたの?」
仕事場の地下駐車場で、たった今マネージャーの社と分かれて車に近づいた時、愛しい少女の顔に蓮は笑顔をさらに崩した。
深夜になる仕事はいつものことだが、その疲れも一気にとれる。
「社さんがぼやいていましたよ。敦賀さんがお仕事の割にはまたお食事が少ないって」
「また…社さんか…」
本当のことだから蓮も否定は出来ないが、マネージャーが好きな彼女とのことを遊んでいるのか、本当に心配しているのか、微妙なラインで食事に絡めては呼び出してお願いすることが、蓮にとっては嬉しくもあり余計なことだとも思えていた。
出来るなら自分から食事に誘うことが、そしてキョーコの思いが少しでも自分を向いているのなら伝えたいとは思っているのに、今更この年での初恋に後込みしているなどとは、「抱かれたい男No1」の行動とは思えない。気障に格好を付けて誘う気はないが、情けない男に見られたくないのはリードしたい男の本音だ。
「最近はまた忙しかったからね。社さんの気持ちも、忙しいのにこうやってきてくれる最上さんにも感謝だけど、君も無理して身体を壊したらダメだからね。社さんも大げさに言う時があるから、無理な時は断っていいからね」
本当は断られたくないくせに言葉ではそう言ってしまう。事実、「京子」は実力を認められて売れてきたお陰で大きい役ではないながらもスケジュール帳もいっぱいのはず。それなのに社長はまだラブミー部のままで、準芸能人の肩書きを取ろうとせずにいた。芸能人としてのタレント名鑑にも載らないせいか、謎の多い芸能人としても陰で囁かれることもでてきた。
そして演じるごとに別人の顔で人々を魅了する実力は、蓮も驚くほどに早い成長を見せていた。趣味の範囲を超えた多種多芸な特技も、役や出演番組を増やすマルチタレントともいえるファン層を増やすことに繋がっていた。
「まだまだ敦賀さんほどに忙しくはないので大丈夫です。それに、いくら社さんにお願いされても、無理なら敦賀さんの為でも日にちをずらしたりしますので、ご心配なく」
「そう?」
「はい。今日は敦賀さんにも、私にも疲れのとれるお鍋にしますが、いかがですか?」
【つづく】