星のかけらを探しに行こう2

    流星群にのって


星のかけらを探しに行こうの続編…です(^▽^;)。

そろそろ流星群の時期と思って途中まで用意していたら、

本日と分かって書き上げました。

夜に強い方、寒さもちょっとOKな方。

あとお天気に恵まれた方。

流星群を、見上げてみてください。



「キョーコ。今夜、星を見に出かけない?」
「星を?」
 付き合いだしてからは、初めて一緒の仕事。
 終わって控え室に向かう途中に、蓮がキョーコに声をかけた。
「星のかけら…だよ……」
 初めて思いを告げられた時、その時も星のかけらになら手が届きそうと、そんな言葉で綺麗な星空を見に行った。
「何処に行くって?」
 二人の会話に社さんが入ってきた。
「暗いところ」
 ワザと意味ありげに笑いながら蓮が言った。
「……そんなとこで、何する気だ、蓮?」
 ニンマリと笑う社。
「星ですよ。明るいところでは見えないでしょう?」
 キョーコが笑顔で答えた。
「何だ…。蓮のことだから、あんな事や、こんな事や…」
「勝手に想像してください。冬にしか見れない星もありますから…」
「分かったよ。二人で仲良く行ってこい。でも寒いから…」
「風邪引かないように、気を付けますよ…」
 愛おしげにキョーコを見る蓮と、恥ずかしそうだが嬉しそうなキョーコの笑顔に、社は笑顔で見送った。
「季節は冬だが、二人には春だな……」



「冬にしか見えない星って、何ですか?」
 キョーコが車に乗ると蓮に訪ねた。
「最近のニュースとか、見てない?」
「ゆっくりは見てないかな…」
「じゃあ、天気予報とかは?」
「昨日はちょっと、休憩中に…あれ? 星、星、あっ! 流れ星? 流星群とかって…。天気というか、雲が少なければ見えるって!」
「そう。夜更かしになっちゃうけど、何年かに一度なら……偶にはいいだろ?」
「見たいです。行きたい!」
 冬は空気が澄んでいて見やすい。それに昨日降った雨は、空気中のチリも掃除してくれている筈だ。
 流星群というのは、地球の表と裏で、見られたり数が少ないタイミングだったりする。
 流れ星は簡単に言えば流星のしっぽが、地球に触れることで流れ星が見られる現象のことを言う。
 何かしらの星座の名前が付くように、その方向中心に見えることから星座の名前で呼ばれる。
「でも、どこに行くんですか? 光があると、見えにくいとかって言ってましたけど…」
「場所は任せて。前の星のところとは違うけど、道先案内人が居るんだ。ただ、一番に見える時間を考えると、防寒は必要だから、車から降りたらしっかり重ね着して、風邪を引かないように」
「それは敦賀さんの方が忙しいんですから、風邪を引いたら…看病するにも、大変ですから」
「看病してくれないの?」
「……しますよ! 特性ドリンク付きで!」
「……あれは、止めてくれない?」
 流石に勘弁願いたいと、蓮も弱音を吐いた。



 そして着いたのは、都心から離れた学校の校庭らしき広場。余計な明かりを付けていないせいか、薄暗くて人の顔は殆ど分からない。しかし人影が多く、かなりの流星見たさの人が集まっていた。
「オーイ、こっちだ。安藤だ」
 駐車場に着いたとき、蓮が道先案内人に連絡を取っていた。そして二人はコートなどを重ね着して、帽子を被って現れた。
 小さくライトが動き、蓮はその明かりを目印に、キョーコと共に歩いていった。
「今晩は。安藤監督」
「そちらの連れは、女性か? 流れ星を見にデートとは、流石にロマンチックなことだな」
「あの…。初めまして、最上と言います」
 キョーコは挨拶もなしではと、名前を言った。
 その名に覚えがあるとは思えなかったが、蓮はキョーコをちらりと見ると、監督に耳打ちした。
「追求はなしでお願いします」
 蓮の言葉の響きで、監督は指でOKサインを出すと小さなテントに案内した。
「もう後、二、三十分もしたら多く見えるはずだ。おっと、今一つ見えた。段々多くなる…。風邪引かないように、少し暖まっておけ。二人とも体が資本だ…」
 そう言って、監督だけはまた外に行ってしまった。
「敦賀さん、あの監督さんは?」
「前に映画でお世話になった人だ。星や空も好きで、自分でカメラを抱えて行くこともあるんだ。流星群の話をしたら、ここで見ないかと言われたんだ。しかし、最上さんが本名で言っても、分かったみたいだね。暗いから分からないかと思ったけど…」
「敦賀さんと一緒だから、だから分かったのでは?」
「いや、それは違うよ。君の花が…隠せなくなった証拠だ」
 外で、「あっ!」「あれ!」そんな声が多くなった。
「出てみようか」
 簡易テントとは言っても、風避けとしては効果があったらしい。外の空気は冷たく、首を竦めた。
「おお、来たか。あの方角に、お、今流れた方だ。あの中心から放射状に流れる。一瞬だ。大気に燃え尽きてしまう一瞬の美しさ。だからこそ美しいのかもしれない。然し、その星の元からすると、我々人間の命なんてもっと一瞬かもしれん」
「一瞬の美しさ…。でも流れ星に、お願い出来ないですね」
 キョーコの言葉に監督も蓮も小さく笑った。
「流れ星じゃなくて、俺にお願いしてくれてもいいけど?」
「……お返しが大変だからいいです…」
 これには監督が吹き出した。
「お前ともあろう男が形無しだな」
 いつもの事だと、蓮は一息吐くとキョーコを真っ直ぐ見た。
「じゃあ、俺からのお願い。まだいつとは言わない、言えないけれど、この指に填める指輪を、送る権利が欲しい」
 暗闇の中、キョーコの左薬指を握り、蓮は言った。
「星にとっては一瞬でも、俺達にとっては永遠の誓いが、約束できる印に…」
 そっと指輪のはまる場所に口付けた。
 監督はシルエットで、キョーコはその唇の感触を感じて赤くなった。
「俺は約束の見届け任を引き受ける」
「わた…し…私なんかで……」
「君だけ。君だけだから…」
 素晴らしい天体ショーに目を奪われていた周りも、はっきりとは分からないながらも、映画さながらのプロポーズが行われているのに拍手を送る人まで出てきた。
「私たち、天体ショーを見に来たんだけど?」
 ちゃかす声も挙がり蓮は被っていたフードをより深く被り直して、キョーコをそっと抱き締めて顔を隠した。
「今日の記念に流れ星も楽しみなさいよ、お二人さん!」
 寒い冬の空気も、空に広がる天体ショーも、見知らぬ人たちまでも、二人を祝福しているかのように星は降り注いでいた。
  


         《FIN》


蓮が、気が付かれない訳はないという突っ込みだけはななしで(^^;;;;



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