1話に当たるお話はゆきひめさんへプレゼントラブラブ


 ゆきひめの城  さまへ



魔女っ子キョーコちゃん 11



 からかうように言う蓮魔王に、キョーコは恥ずかしさで逃げ出した。
「チャリッ…」
 頭上から…する筈のない金属の音。
 微かであった為に、おしゃべりが弾んでいる中を気が付いたのはほんの数人だっただろう。蓮魔王とクー前魔王が頭上を見上げた。
「あの…何か?」
 キョーコが真剣で怖いほどに見上げる二人の姿を不思議に思って、声を掛けつつ二人の見上げる方を見た。
 キチッ…キチッ……キチ…キチ…キイ…キイ……。
「あの音は…?」
 落ち着いて耳を澄ませば聞こえてくる音。
 キョーコもその先にある物に気が付いた。
 二人の前、現魔王が睨み上げる先には、大広間を照らす大きなシャンデリア。
 キシ…、キシ…、キーン…。
 何者かの力で外されていくシャンデリアの鎖が、重さに耐えられなくなって自らの重さで鎖を切った。
「キャーー!」
 広間中から聞こえる悲鳴。
 そしてシャンデリアに混じって落ちてくる矢が、蓮魔王に向かって飛んできた。
「この矢は、術で守られておる! 蓮、逃げろ!」
 クー前魔王が叫びながらシャンデリアを止めようとするが、その勢いが微かに鈍るだけで止まらない。
 蓮魔王は指で空を切って術を説こうとする。しかし、間に合わない!
 そう思った蓮が目を閉じたとき、キョーコが蓮の周りを覆うように手を広げて立っていた。身を挺して蓮を守ろうとするキョーコ。
「蓮様を、蓮様を傷つけるなんて、許さない!」
 キョーコが叫びながら蓮を守ろうとする姿に、クー前魔王は蓮を包む光を見た。
 それはシャンデリアの破片も、矢も全て止めてしまう、蓮を包む防御の魔術。
「キョーコ? キョーコ! そなた素晴らしい力を持っているではないか! キョーコ! もうよい…。オイ!」
「蓮…様……」
 蓮の声がやっと聞こえたかと思うと、キョーコの手は下がり蓮の腕に倒れ込んだ。
「キョーコ? キョーコ? 気を失っている…」
 キョーコが意識を失うと共に、蓮の周りを包んでいた光の防御が解かれた。
 同時に蓮に向かって飛んできた破片や矢も、大きな音を立てて床に散らばった。
「キョーコ…。お前は素晴らしい魔術を持っていたではないか…。これからは誰はばかることなく、魔女として名乗っていいぞ……」
 魔女としてはまだまだというキョーコだが、今の防御の力はかなりのモノだった。
 二人の魔王がその術の強さに跳ね返せない力を、キョーコ一人で押し止めてしまったのだ。
 だがその力は、使い方によっては体力さえ奪う。そのせいでキョーコは気を失ってしまったと見ていいだろう。
「キョーコ…。お前は素晴らしい力で俺を守ってくれた。お前だけが后になる女性だ…」
 愛おしさよりも、そこまでの力を使わせてしまったことが、蓮には辛かった。
 キョーコを抱き締めて蓮が呟いていると、クー前魔王もキョーコの顔をのぞき込んで、深い笑みを浮かべた。
「蓮。そなたは素晴らしい后に出会ったな。先程の…自分を顧みずお前を守ろうとするキョーコの姿は、お前を想う気持ちだ。想いの大きさだ……」
「俺の為に身を挺して守ろうとしてくれた…。それがキョーコの強さなのだろうか……」
 まだ気が付かないキョーコを思って、蓮は心配そうにしている。
「う…ん……」
「キョーコ? 気が付いたか?」
 僅かに声がすると、蓮はキョーコの両頬を包んで瞳をのぞき込んだ。
「蓮様…蓮様、お怪我は!」
 意識が戻ると同時に、キョーコは蓮の心配をして声を上げた。
「私は無事だ。お前が守ってくれた。お前の力は防御なのだな。私の最高の守り姫だ」
 蓮はそう言うと、キョーコを強く抱き締めた。
「……私…、蓮様をお守り出来たのですか?」
 蓮を守りたいと、手を広げて蓮の前に出たところは覚えている。しかし、その後の食いしばるほどに矢や破片を押し止めようとして、意識を失ってしまって記憶にない。
「……お前は、意識のなくなるまでも頑張ったのか? それほどに私のことを、守ろうとしてくれたのか?」
 驚きながらもキョーコの想いの深さに、蓮魔王は喜びにキョーコの唇に重ねた。
「れ、蓮様! 人のいらっしゃるところでは…」
 まだまだ初な面を持つキョーコは、人前でのキスで蓮を睨んだ。 
「これこれ、じゃれ合うのもいいが、私も礼を言わせてくれんか、蓮」
「クー前魔王様」
 クーはじっとキョーコを見た。
 華奢で可愛らしい姿の中に、あれだけの力を秘めている。そして、蓮の心を虜にしたのは、姿だけではなく素直な性格、真っ直ぐな心…。
 息子にとって、あれほど素直で嬉しそうな笑顔をさせてくれる伴侶など、世界中探してもいるのかと思うほどだ…。
「キョーコ、今の働きは素晴らしかった。魔女としての力はないと言っていたが、今のお前が見せた防御の魔術は、私と蓮で防ごうとしても出来なかったのだぞ」
 驚きに感謝の意も込めて、クー前魔王は言った。
「あの、私としても必死で、途中から記憶がありません」
 控えめに答えるキョーコに、クーも驚いた。
「記憶が途中で飛んでも尚、力を使ったのか? ……それがキョーコの魔法かもしれないな。愛する者を守りたいと思うことで、現れる魔法なのだろう……」
「キョーコの魔法は、今度のことで底が知れないと分かったな。勉強熱心ではあるけれども、想いの強さがより強くさせる…」
 そしてその気持ちが、自分の為であると分かれば、蓮としては心が熱くなるほどに嬉しい。
「では、私ももっと頑張れば、色々な魔術を使えるようになりますか?」
 一人前の魔女として認めてもらう為には、今の防御の力だけでは難しいと、キョーコは素直な疑問を口にした。
「それについては分からんぞ、キョーコ。魔術の力も、向き不向きがある。全ての魔術をバランスよく使えるのは限られた者だけだ。それは何故か知っているか、キョーコ?」
「いえ…」
「魔術、魔法とは、内から生まれるエネルギーを使う。周りのモノのエネルギーも使うが、資質に沿った術が得意となる者も多い。魔界に生まれたものなら、それぞれにその器にあうだけの力を使えるだろう。だが小さな器であるならば、無理も利かぬ。向かぬ術なら振り回される」
「それでは私はどうすれば、蓮様のお役に立てる后になれると…」
 今の自分の力が、半分意識を無くしていたキョーコには分からず訪ねた。
「キョーコはそのままでいいのだ。お前は必死に蓮を守ろうとした。魔法とは元来、そういうものなのだろう…。大切な人の為に役に立てばいい。我が息子ながら、蓮はよくやっている。その補助として后のキョーコがいれば、蓮は間違いなく魔王としての仕事をやり遂げてくれるだろう」
 キョーコはクーの言葉に、自分がどれほど蓮を愛しているか、確認をした気がした。
 私…ちゃんと蓮様のことを愛しているんだ。
 私は……恋して、人を愛することが出来ていたの…?
 
               《FIN》



おーキョーコちゃん頑張った!

しかし、予定外のことになっていってるんですけど、
キョーコちゃん、何処いきましょう?(^^;;;;

(やっぱり混ぜたのがいかんかったかしら?)
今回のオーラストは、飛び入りです~~~。汗あせる
ラストに向けては差し障りは
1話延びるぐらいで済みそうですけど、
思わず、「自分頑張れ!」と思ってしまった。
(これ以上、迷い道クネクネするな~(;^_^A)





web拍手 by FC2