4-11 その場しのぎの苦肉の策 1 | 夢、成る瞬間

夢、成る瞬間

ダグラス・コマエ物語

 ここで一回帰国したが、数か月後に戻ってきた時には新しい家はほぼ完成していた。

 人工島に建てられた家の外壁は淡いブルー、窓枠は白に塗られ、家全体は景観にすっぼり溶け込んでいた。

 足元にはさんご礁のかけらが敷き詰められ、とても歩きやすかった。

 家そのものは高床式で、ポストは岩盤まで達していた。各ポストは大小の岩々によってがっしりと支えられていた。人工島の高さは海底から四、五メートルほどだった。

 満潮時には海に浮かぶ島になるが、いったん潮が引くと岩肌があらわになる。

 寝室が二つにダイニングとキッチンがついていた。地元職人に依頼し、ベッドやテーブルなどの家具を作ってもらった。

 さて、この前後からぼくらは日本ソロモンを行き来する生活を送るようになるのだが、あちこちでソロモンの話をしていたので、そのうちぼくらと一緒に旅をする人が出てきた。逆にアダコア滞在中にぼくらを訪ねて来る人もいた。 

 初めは友人知人、親戚の範囲であったのが口コミによって噂が広がり、訪問客が少しずつ増えていった。
 この頃まだスマホなどなく当然ながらSNSもなかったが、もしのちのように気軽に写真や動画をインターネットにアップできる状況だったならば、ドルフィン・センターはもっと急速的な広がりを見せていたかもしれない。

 かといって仮にそうなったとしても、まだ家一戸しかなかったのでぼくらは大いに困ることになっていただろう。

■ フォト 「エミリとモンモの旅」

■ フォト 「一人の回」

海の上の家(マライタ州アダコア 1998年)

 

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