3-10 投資会社 1  | 夢、成る瞬間

夢、成る瞬間

ダグラス・コマエ物語

 真珠会社をやめてのは、ちょうどセミたちが騒がしい盆の頃だった。
「さあ、これからどうしよう」
 特に当てがあったわけでもない。これでまた振り出しに戻っただけだ。
 大学中退を承認してもらう代わりに出ていく約束だったが、他に行く場所もなくぼくはとりあえず実家に帰っていた。
 なんとなく気まずくもあったが、両親はぼくの“出戻り”を黙認してくれた。
「よしJJ、散歩に行くぞ」
 愛犬の首輪になわをつけて出発した。

 家の前に公園があった。その向こう側に丘陵地帯が広がっていた。横尾山ほど面白くなかったが、犬を走り回らせるにはちょうどよかった。
 ヒグラシが澄んだ声で鳴き、一日の終わりを告げていた。

忠犬ワン公JJ(神戸市学園都市 1996年)
 
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